「テレアポなんて、転職で何の役にも立たない」
そう思っている方は、けっこう多いです。毎日ひたすら電話をかけて、断られて、また かけて。これが何かのスキルになっているとは、正直思えない。その気持ちは、よく分かります。
でも、結論から言うと、それは違います。テレアポ経験は、転職市場でちゃんと評価されます。ただし、条件があります。
私は営業ひとすじ20年、約70名の営業組織を管理してきました。テレアポの現場から始まり、採用する側・面接する側も長くやってきた人間です。「辞めたい」と言いに来る人を、何人も見送ってきました。
その立場から、正直に書きます。採用する側が、テレアポ経験の「どこ」を見ていたのかという話です。
まず結論:テレアポ経験は評価される。しかも今、追い風が吹いています
意外に思われるかもしれませんが、テレアポ経験者にとって、今の転職市場は悪くありません。理由は、市場の側が変わったからです。
近年、SaaS業界を中心にSDR・インサイドセールス職が急拡大しており、それにともなってテレアポ経験者の市場価値が再評価される構造変化が起きている、と指摘されています(出典:SQiL Career Agent)。
さらに、インサイドセールスの求人に「未経験歓迎」が多いのは、需要が急に増えたのに、経験者の供給が追いついていないからだと言われています。そして、こうした求人で採用する企業が最も求めているのは「営業経験」そのものではなく、「傾聴力・ヒアリング力・コミュニケーション能力」だとされています(出典:キャリアラダー)。
ここ、大事なところです。あなたが毎日やっている「聞く」「話す」「断られても続ける」は、市場が今いちばん欲しがっているものかもしれない、ということです。
採用する側は、テレアポ経験の「どこ」を見ていたか
では、面接で私が何を見ていたか。正直にお話しします。結論を言うと、数字そのものではありません。
1. 数字は見ます。でも本当に知りたいのは「どう作ったか」
もちろん、架電数・アポ獲得数・達成率といった数字は見ます。数字は、実力を客観的に示す材料になります(出典:応募書類マスターほか)。
ただ、面接する側が本当に知りたいのは、「その数字を、どうやって作ったのか」です。月に100件のアポを取った人がいたとして、聞きたいのは100という数字ではなく、「なぜあなたは取れたのか」。ここを語れる人と語れない人で、評価は大きく分かれます。
2. 工夫の跡があるか。つまり、PDCAが回せる人か
ここがいちばん大事です。
転職の解説記事でもよく挙げられているのが、工夫と改善のプロセスです。「トークスクリプトを自作した」「架電する時間帯を分析した」「断り文句への切り返しをリスト化した」といった行動は、どの職種でも通用する課題解決能力として評価される、とされています(出典:SQiL Career Agent)。
私の言葉で言い直すと、これは「PDCAが回せる人か」ということです。
テレアポやインサイドセールスは、黙々と自分と戦う時間がほとんどです。誰かが横で励ましてくれるわけでもなく、断られ続ける。その中で、「じゃあ次はこう変えてみよう」と自分で回せる人は、確実に強くなっていきます。最初はまったく取れなかった人でも、です。
逆に、同じやり方を変えずに打ち続ける人は、半年経ってもあまり変わりません。差がつくのは才能ではなく、回しているかどうかでした。
3. その根っこにあるのは「当事者意識」
では、PDCAを回せる人と回せない人の違いは何か。私が見てきた限り、当事者意識があるかないか、ここに尽きます。
会社から給料をもらっているから、言われた数字を追いかける。これでも仕事は成立します。でも、「自分はなぜこの数字を取るのか」という目的を自分で持っている人は、動き方がまったく違います。誰にも言われなくても改善するし、うまくいかない理由を自分で探しにいく。
面接で私が探していたのは、結局これでした。当事者意識のある人は、業種が変わっても伸びます。
4. 続けた、という事実そのもの
これは見落とされがちですが、大きな評価ポイントです。断られ続ける仕事を、それでも続けてきた。この事実は、高いストレス耐性と精神的なタフさの証明になる、と言われています(出典:SQiL Career Agent)。
管理職として言わせてもらうと、これは本当です。採用して一番困るのは、打たれ弱い人です。逆にテレアポを続けてきた人は、少々のことでは折れません。本人が思っている以上に、これは強みです。
逆に、評価されないテレアポ経験の「伝え方」
ここからが大事です。同じ経験でも、伝え方ひとつで評価はゼロになります。落とす側だったので、はっきり書きます。
「言われた通りに架電していました」
マニュアル通り、スクリプト通りにやってきました。一見、忠実で真面目に聞こえます。ですが採用する側からすると、自発的な動きがまったく見えません。「この人は当事者意識が薄いのかな」と思われてしまいます。
ただ、多くの場合、工夫がなかったのではありません。思い出せていないだけです。本当にもったいない。
数字が一切書かれていない
「頑張りました」だけでは、判断材料がありません。
ここは誤解のないように、正直に書きます。予算は、達成しなければいけないものです。 営業である以上、そこは譲れません。
ただ、管理する側を長くやってきた立場から言わせてもらうと、未達の原因は、本人よりも上司側にあることのほうが多いと思っています。落とし込みと教育がしっかりできていれば、獲得のスキームはだいたい出来上がっているので、そう簡単に未達にはなりません。部下が数字を作れないのは、基本的にはマネジメントの責任です。
本人側に原因があるとすれば、上司の言うことを聞かない、アドバイスをもらっているのに守らない。だいたいこのあたりです。
ですから、もしあなたが未達だったとしても、それだけで「自分には何もない」と思い込まないでください。ただし、面接でそれを「上司のせいでした」と言うのは絶対にやめてください。 それは他責であって、確実に落ちます。未達を上司の責任だと考えるのは、上司の側の仕事です。あなたの仕事ではありません。
あなたが語るべきなのは、プロセスの数字です。訪問営業なら「1日◯件は必ず回っていた」。テレアポなら「1日500コールは絶対に回していた」。そういう日々の目標数と、それを達成するために何をしたか。ここなら必ず語れるはずです。それが出てこないことが問題なのであって、語れるものは必ずあります。
受電業務と混ざっている
テレアポは「アウトバウンド業務」「架電業務」と明記して、受電と区別すべきだとされています(出典:サクレキ)。営業はアウトバウンドですから、ここは分けて書くべきです。
ただし、受電の経験も、使い方によっては武器になります。お客さま対応のクオリティ、言葉遣い。そういうものを自分で意識して取り組んできたのであれば、それは立派な評価対象です。
たとえば、クライアントを背負ってのアウトバウンドでは、クレームを絶対に起こせません。そういう現場では、クオリティの意識を持っている人は本当に重宝されます。受電経験を「ただやっていました」で終わらせず、「何を意識していたか」まで書ければ、強みに変わります。
辞めた理由を、そのまま言ってしまう
「きつかったので」「上司が合わなかったので」。よく言えば素直です。ですが、採用する側からすると、懸念しかありません。
70名規模を見てきた立場から、いちばんの懸念を正直に言います。入社したあと、休憩中など、こちらの見えないところでネガティブな会話をされることです。これが、組織にとって本当にきついのです。
ネガティブは伝染します。一人の不満が、周りの数人の空気を変えてしまう。だから私は、面接で辞めた理由をそのままネガティブに話す方は、採用しませんでした。能力の問題ではなく、組織の問題としてです。
ここは、伝え方でまったく変わります。同じ事実でも、言い方ひとつです。
「トップ実績でした」は、実はあまり効きません
面接で「前職ではトップの成績でした」と言う方は、本当にたくさんいました。もちろん立派なことです。ただ正直に言うと、その一言だけでは、評価はあまり動きませんでした。
理由は単純で、商材によって営業の難易度がまったく違うからです。
たとえば電気のようなライフライン系は、契約すれば料金が安くなるという、お客さまにとって明確なメリットがある商材です。一方で、そこまではっきりしたメリットを示しにくい商材もあります。この2つで「トップを取る」難しさは、まるで別物です。商材が違えば、同じトップでも中身が違います。
そしてこれは、電話の世界に限りません。携帯ショップ、法人営業、訪問販売。それぞれの業種でトップだった方でも、次の場所でそのまま当てはまるとは限りません。実際、トップパフォーマーを採用したからといって、100%優秀な成績を収めるかというと、そうでもありませんでした。
だから私が見ていたのは、実績そのものより「考え方」でした。トップだった方にも、それぞれ違う考え方があります。そこにこそ、その人が次の場所でも通用するかどうかが表れます。
逆に言えば、トップでなかった方にも、チャンスは十分にあります。「トップでした」と言えないことを、引け目に感じる必要はまったくありません。
じゃあ、どんな人を採りたかったのか
ここまで厳しい話が続いたので、逆の話も書きます。
私が採りたかったのは、素直で、快活で、明るく取り組んでくれそうな人です。
正直に言うと、知識や地頭の良さは、二の次でした。多少要領が悪くても、素直に受け止めて、明るくやってくれる人。そういう方は、未経験でもぜひ採りたいと思っていました。伸びしろがあるからです。
テレアポやインサイドセールスは、結局のところ続けられるかどうかの勝負です。だから、スペックより、姿勢を見ていました。
面接で本当に見ていたのは「この人を加えたら、プラスかマイナスか」
ここまでいろいろな見方を書いてきましたが、最終的に私が見ていたのは、もっとシンプルなことです。
「今いるメンバーにこの人を加えたら、チームにプラスに働くか。それともマイナスになるか」。70名規模の組織を預かっていたので、結局はここに行き着きました。
だから、その方が個人で数字を作ってきた営業なのか、チームワークを大事にして動いてきた営業なのかも見ていました。どちらが良い悪いではありません。これまでの経歴によって違いますし、今のチームに必要なのがどちらなのかも、その時々で変わります。
「あなたは運がいいですか?」
採用について、有名な逸話があります。パナソニックの創業者・松下幸之助さんは、採用面接で「あなたは運がいいですか?」と尋ね、「運が悪いです」と答えた方は、学歴や面接の内容がどれだけ良くても採用しなかった、と言われています。
これは本当に運の良し悪しを確かめているのではなく、物事をポジティブに受け止められる人か、日々に感謝できる人かを見ていたのだと解釈されています。(※広く知られている言い伝えで、一次資料で確定できるものではありません。人物についても諸説あります)
私も、まったく同じ感覚です。「自分は運が悪くて」と言う方は、そもそも出来事をネガティブに受け取る癖があります。その癖は、入社後に必ず出ます。
人材は貴重です。採用に困っていた時期もありました。それでも、組織に加えてプラスに働かないのであれば、どんなに人手が足りなくても採りませんでした。一人のネガティブが、チーム全体の空気を変えてしまうことを知っていたからです。
裏を返せば、明るく前向きに受け止められる方は、それだけで大きな武器を持っています。スキルより、ずっと強い武器です。
正直な話:30代以降の未経験は、ギャップが大きい
ここは、書くか迷いました。でも、知らないまま飛び込んで後悔してほしくないので、正直に書きます。
30代を過ぎてからの未経験でのアウトバウンド転職は、正直きついことが多いです。
もちろん全員ではありません。ですが私が見てきた範囲では、入る前と入った後のギャップで、早期に辞めてしまう方が本当に多かったです。面接で「やる気はあります」と言ってくれた方でも、です。やる気の問題ではなく、実際にやってみないと分からない種類のきつさが、この仕事にはあります。
これはあくまで私の実感であって、統計ではありません。ただ、「未経験歓迎だから大丈夫」と気軽に考えるのは危険だ、ということはお伝えしておきます。挑戦するなら、覚悟と、事前にリアルを知っておくことが要ります。
テレアポ経験が活きる、主な転職先
経験を活かせる先として、よく挙がるのは次のあたりです。
- インサイドセールス
いちばん自然な移行先です。電話でのコミュニケーションがそのまま活き、前述のとおり市場の追い風もあります。 - カスタマーサクセス
お客さまの課題を聞き出す力が活きます。テレアポからの人気の転職先として挙げられています(出典:ビギナーズリンク)。 - 営業事務
営業の流れを分かっている人は重宝されます。 - 異業種
ストレス耐性・課題解決力は、業種を越えて通用します。
どれを選ぶかは、「テレアポという仕事が嫌なのか」「今の会社が嫌なのか」で変わります。ここを取り違えると、転職しても同じことを繰り返します。
どの道に進むにしても、自分のテレアポ経験を「言葉にして」求人に当てはめてくれる相手がいると、話が早く進みます。相談は無料で、合わなければ断ってかまいません。
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70名を見てきて分かった、評価される人の共通点
最後に、いちばん書きたかったことを書きます。
約70名の営業を管理して、辞めていく人も、残る人も、転職して成功した人も、そうでなかった人も見てきました。その中で、次の場所で評価された人には、共通点が1つだけありました。
それは、「自分の数字を、自分の言葉で説明できる」ということです。
成績が良かったかどうかは、実はあまり関係ありませんでした。トップだった人が転職先で伸び悩むこともあれば、平均以下だった人が別の場所で花開くこともある。分かれ目は、「なぜその数字だったのか」を、自分で説明できるかでした。
「今月は取れませんでした。理由は、リストの質が下がっていたのに、かけ方を変えなかったからです」。こう言える人は、どこへ行っても成長します。これが、当事者意識がある、ということです。面接官も、結局そこを見ています。
だから、転職を考えているなら、まずやってほしいのは求人を見ることではありません。自分がやってきたことを、思い出して、言葉にすることです。工夫したこと、失敗したこと、数字が動いた瞬間。それが、あなたの武器になります。
次に読むといい話
「じゃあ、具体的にどうすればいいのか」。ここがいちばん知りたいところだと思います。場面ごとに、別の記事にまとめました。
面接で、辞めたい理由をどう伝えるか。 事実は変えずに切り取り方を選ぶだけで、印象はまったく変わります。そのまま使える言い換え例も載せています。
▶ 面接で「テレアポを辞めたい理由」をどう伝えるか。落とす側が見ていたポイント
書類の段階でつまずいているなら。 通る職務経歴書の実物サンプルを載せています。
▶ テレアポ経験を活かす職務経歴書の書き方。書類で落とす側が見ていたこと
インサイドセールスを受けるなら。 志望動機の作り方と例文、面接で本当に見られているものをまとめました。
▶ インサイドセールスの面接で聞かれること。志望動機はこう作る(例文つき)
SaaS業界を目指すなら。 年収相場やキャリアパスに加えて、テレアポ経験がSaaSで活きる部分と、そのまま持ち込むと失敗する部分を書きました。
▶ 営業からSaaSへ転職。テレアポ・インサイドセールスの経験は、どう活きるのか
30代以降で、未経験から挑戦しようか迷っているなら。 厳しい話も正直に書いています。
▶ 30代以降・未経験からインサイドセールスへ。採る側が見てきたリアル
面接室の外でも、採用担当は見ています。 廊下での発言が採用を左右した実例を書きました。
▶ 廊下での発言を、採用担当は見ています。
まとめ
テレアポ経験は、転職市場で評価されます。SaaS業界のインサイドセールス拡大という追い風もあり、市場価値は再評価されつつあります。
ただし、評価されるのは「数字そのもの」ではなく「その数字をどう作ったか」。工夫の跡、つまりPDCAを回してきたか。そして、その根っこにある当事者意識。この3つが伝われば、テレアポ経験は立派な武器になります。
「何のスキルにもならなかった」と思っているなら、それはたぶん、思い出せていないだけです。まずは、自分がやってきたことを書き出すところから始めてみてください。
自分の言葉でうまく整理できないときは、一人で抱え込まずに一度話してみるのも手です。求人数の多い総合型エージェントなら、業種を問わず選択肢を広く見せてもらえます。
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※本文中の市場動向や評価のポイントのうち、出典を記載した部分はその見解・一般的な傾向です。出典のない部分は、筆者が約70名の営業組織を管理してきた中での実感であり、統計ではありません。実際の評価は、応募する企業・職種・タイミングによって変わります。最終的な判断は、求人情報や各社の公式情報をご確認のうえ、ご自身でお願いいたします。
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この記事を書いた人
営業ひとすじ20年。電話営業・インサイドセールスの現場から始まり、約70名の営業組織のマネジメントを経験。採用面接にも数百人単位で関わってきました。「辞めて正解だった人」も「辞めなくてよかった人」も見てきた立場から、テレアポ・インサイドセールス・営業職の次のキャリアについて、きれいごとではない話を書いています。

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