コールセンターのカスハラ、無理して続けることはない。電話で3時間責められた管理職からの話

コールセンターのカスハラ、無理して続けることはない。電話で3時間責められた管理職からの話 コラム

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コールセンターで、カスタマーハラスメント(カスハラ)に疲れて「辞めたい」と感じているなら、辞めていいと私は考えています。顔も見えず、この先一生会うこともない一人の相手のせいで、体調を崩し、その先の人生まで狂わされるのは、あまりにも割に合わないからです。営業の仕事がしたいなら、電話でクレームを受け止め続ける以外の営業は、ほかにいくらでもあります。

2026年(令和8年)10月1日からは、法律の改正で、会社にカスハラへの対策が義務づけられます。この記事では、私が管理職として実際に受けたカスハラの話と、普通のクレームとカスハラの境目、そして「辞めるか、続けるか」をどう考えればいいかを書きます。

何度かの電話で、合計数時間責められたことがあります

身元が分かる細かい部分は伏せますが、管理職として、一件のカスハラに向き合ったことがあります。電話は何度かに分けて続き、合計すると数時間になりました。

きっかけは、営業の対応に対するお客様のお怒りでした。怒る理由があること自体は、分かります。だから、できることは全部やりました。会社としても、個人としても謝罪をしました。お客様の言うことには、対応できるものはすべて対応しました。誠実に、真摯に向き合ったつもりです。これ以上やれることはない、というところまでやりました。

それでも、収まりませんでした。電話口では私一人に向かって、ひたすら責める言葉が続きました。最後には人格を否定するようなことまで言われ、「会社に乗り込むぞ」という言葉も出ました。電話一本で、ここまで怒ることがあるのか。そのとき頭に浮かんだのは、それだけでした。

収まったきっかけは、会社のホームページでした

この件が収まったきっかけは、意外なところにありました。会社のホームページには、すでにカスタマーハラスメントへの対応方針が載っていました。お客様がそれを自分で見つけて、今自分がやっていることがまさにそれだ、と気づいたようでした。そこで、急に態度が変わりました。

この経験から感じたのは、会社が「カスハラには毅然と対応します」と外に向けてはっきり示しておくことには、現場を守る力がある、ということです。担当者が一人で言い返すより、会社の方針として示されていることのほうが、相手に届く場面があります。後で書く法改正の中身とも、ここはつながっています。

私は体調を崩しませんでした。でも、それは私の場合です

私自身は、この件で体調を崩すことはありませんでした。言われたことは右から左に流して、気にしないようにしています。割り切っているからです。

ただ、それは私の場合の話です。世間一般で考えれば、あれだけのことを言われたら、辞めたくなるのが普通だと思います。言われたことを、真正面から受け止めてしまう人もいるでしょう。そういう人にとっては、同じ数時間でも、受けるダメージがまったく違うもの。本当に体調を崩してしまう人もいます。

「自分は平気だったから、あなたも平気なはず」とは、管理職として言うべきではないと考えています。割り切れるかどうかは、我慢の量ではなく、人ごとの性質の違いだからです。

普通のクレームとカスハラは、どこで分かれますか

普通のクレームは、お客様の言い分がまっとうなものです。こちらに落ち度があって、それを指摘されている。これは、誠実に対応すべきものです。むしろ、こちらがきちんと答えられず、相手をどんどん不安にさせるような回答をして、怒りの温度を上げてしまうのは、対応する側の問題です。

カスハラは、その先にあります。こちらが誠実に対応し、謝罪もしているのに、それでもなお、度を越えた要求を重ねてくるものです。対面なら「土下座しろ」と言われるような場面です。電話では、さすがに土下座しろとまでは言われませんが、通話の記録にはっきり残るような、明らかに行き過ぎた要求をしてきます。

電話で言われることは、だいたい決まっています。

  • 「俺のこの時間を返してくれ」
  • 「どうしてくれるんだ」と、はっきりしない形で何かを求め続ける
  • できないと伝えていることを、相手もできないと分かっていながら、何度も要求してくる

境目は、要求の中身と、言い方の両方です。こちらが誠実に対応したあとも、中身が度を越え、言い方が人を傷つけるものになっていれば、それはもうクレームではありません。

国は、カスハラをどう定義していますか

厚生労働省は、職場のカスハラを、次の3つをすべて満たすものとしています。

  1. 顧客などの言動であること
  2. 働く人の業務の性質などに照らして、社会通念上許容される範囲を超えたもの
  3. それによって、働く人の就業環境が害されること

電話やSNSなど、インターネット上で行われるものも含まれます。「社会通念上許容される範囲を超える」言動の例として、厚生労働省は次のようなものを挙げています。

区分 厚生労働省が挙げている例
要求の中身が行き過ぎている そもそも要求に理由がない、または商品・サービスと全く関係のない要求/契約などで想定しているサービスを著しく超える要求/対応が著しく困難な、または対応が不可能な要求/不当な損害賠償要求
手段や態度が行き過ぎている 身体的な攻撃(暴行、傷害等)/精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言、土下座の強要等)/威圧的な言動/継続的、執拗な言動/拘束的な言動(不退去、居座り、監禁)

出典:厚生労働省リーフレット「令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます! カスタマーハラスメント対策の義務化【改正労働施策総合推進法・指針の内容】」

私が受けた件に当てはめると、「対応が不可能な要求」を繰り返し、人格を否定する「暴言」や「威圧的な言動」があり、何度も電話を重ねる「継続的、執拗な言動」でもありました。現場の感覚で「これはもうクレームではない」と思ったものは、国の例示とほぼ重なっています。

2026年10月1日から、会社には何が義務づけられますか

改正された労働施策総合推進法により、2026年(令和8年)10月1日から、事業主にはカスハラを防ぐための措置が義務づけられます。厚生労働省のリーフレットでは、事業主が「必ず講じなければ」ならない措置として、主に次のものが示されています。

  • カスハラには毅然とした態度で対応し、働く人を守るという方針をはっきりさせ、働く人に知らせる
  • カスハラの内容と、あらかじめ決めた対処の内容を、働く人に知らせる(例として、管理監督者にその場の対応を仰ぐ、できる限り一人で対応させない、犯罪になり得る言動は警察に通報する、などが挙げられています)
  • 相談窓口をあらかじめ決めて、働く人に知らせる
  • 事実関係を速やかに確認し、被害を受けた人への配慮と、再発防止の措置をとる
  • 特に悪質なカスハラへの対処の方針をあらかじめ決めておき、対処できる体制を整える
  • 相談した人のプライバシーを守り、相談したことを理由に不利益な扱いをしないと決めて、知らせる

私の件で、ホームページに載っていた方針が相手の態度を変えたことは、先に書きました。法律が求めているのは、その方針を働く人の側にもはっきり示し、「一人で抱えさせない」仕組みを会社が持つことです。

自分の職場が守ってくれるかは、どこで分かりますか

10月1日以降も、職場の対応がすぐに整うとは限りません。次のような点を見ると、自分の職場がどこまで本気かが分かります。

  • カスハラへの方針が、社内で説明されたか
  • 行き過ぎた電話のとき、上司に代わってもらえるか。一人で受け続けさせられていないか
  • 相談できる窓口が、決まっているか
  • 相談したことで、評価を下げられたり、責められたりしないか

もし、方針も相談先もなく、行き過ぎた電話を一人で受け続けることが当たり前になっているなら、それは本人の打たれ強さの問題ではありません。会社の側の問題です。法律の内容について、厚生労働省のリーフレットでは、問い合わせ先として都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)が案内されています。

カスハラで疲れたら、辞めていいと私は考えています

ここからは、私の考えです。カスハラで疲れて辞めたいと感じているなら、辞めていいと思います。

顔も見えない相手です。この先一生、会うこともないかもしれない一人です。その一人のせいで気分を害され、眠れなくなり、うつになってしまう。そうなったら、それ以上に最悪なことはありません。その先の人生まで、その一人に狂わされることになるからです。

私は割り切れるので、続けてこられました。でも、言われたことを真正面から受け止めてしまう人に、同じやり方を勧めることはできません。すごく受け止めてしまう人にとっては、その仕事は辞めたほうがいい。違う仕事をしたほうがいい。これは、はっきり言えます。

営業を続けたいなら、コールセンター以外にも道はあります

「それでも営業がしたい」という人もいると思います。その気持ちは大事にしてほしいです。ただ、営業の仕事は、コールセンターだけではありません。ほかにも営業はたくさんあります。

もちろん、営業でも、営業以外の仕事でも、お客様からの厳しい言葉が完全になくなる仕事は、ほとんどありません。それでも、私の感覚では、電話で次々とクレームを受け止めるコールセンターの仕事は、その中でも特にきついほうだと思います。顔が見えない相手とのやり取りだから、というのも理由の一つだと私は感じています。

コールセンターとテレアポでは、転職市場での見られ方も違います。そのあたりはコールセンターとテレアポの違い。転職市場での評価は、どう分かれるのか。で整理しています。営業の経験を、どの職種で活かせるかは営業から転職するなら、どの職種が向いているか。採用側が見てきた、活きる強みと注意点。にまとめています。

辞める前に、切り分けておきたいこと

辞めていいと書きましたが、勢いだけで決める前に、一つだけ切り分けてほしいことがあります。つらいのは「カスハラそのもの」なのか、「カスハラから守ってくれない職場」なのか、です。

カスハラそのものがつらいなら、電話でクレームを受ける仕事から離れることを考える段階です。守ってくれない職場がつらいなら、同じ職種でも、方針と体制がきちんとある会社に移るだけで、ずいぶん変わる可能性があります。10月1日の法改正のあと、各社がどこまで対応しているかは、面接で聞いてみてもいい質問です。

ほかの理由も絡んでいるときの切り分け方は、テレアポを辞めたい。転職の前に、切り分けたい3つのこと。に書いています。心と体が限界に近いと感じているなら、営業がしんどい、もう限界かもしれない。そう感じたときに読んでほしい。も読んでみてください。

一人で抱えず、話して整理してください

カスハラを受けたあと、一番よくないのは、一人で抱え込むことです。職場に相談できる人がいるなら、まずはそこに話してください。職場に相談しにくいなら、外の誰かに話すだけでも、頭の中は整理されます。

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出典:厚生労働省「令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます! カスタマーハラスメント対策の義務化【改正労働施策総合推進法・指針の内容】」、同「令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について」(いずれも2026年9月26日確認)。法律・制度の内容は、最新の公式情報をご確認ください。この記事の体験談は、身元が分からないよう一部を伏せて書いています。

あわせて読みたい:テレアポ・コールセンターのカスハラ。義務化された今も会社が何もしないなら、転職を考えていい。

この記事を書いた人

営業ひとすじ20年。電話営業・インサイドセールスの現場から始まり、約70名の営業組織のマネジメントを経験。採用面接にも数百人単位で関わってきました。「辞めて正解だった人」も「辞めなくてよかった人」も見てきた立場から、テレアポ・インサイドセールス・営業職の次のキャリアについて、きれいごとではない話を書いています。

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