先入観があると、営業の一歩目が遅くなります。新人時代に本部長から言われたことを書きます。

先入観があると、営業の一歩目が遅くなります。新人時代に本部長から言われたことを書きます。 コラム

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営業を始めたばかりの頃、当時の本部長にずっと言われていたことがあります。「先入観を持つな」。何度も繰り返し言われて、正直、最初はピンときていませんでした。でも今、採用にも関わる立場になって振り返ると、本当にその通りだったと思うことが多々あります。

今日は、その教えについて書きます。

先入観は、こんな形で顔を出す

営業をしていると、先入観はいろいろな形で顔を出します。まだ一度も会っていない相手なのに、「この業種の人は苦手だな」と勝手に苦手意識を持ってしまう。電話をかける前から「どうせこの人は断りたいんだろうな」と決めつけてしまう。「この年代の人は絶対に契約しない」という固定概念ができてしまう。

どれも、実際にやってみる前の段階で生まれています。これが一番よくない、と教わりました。

先入観の一番の害は、足が止まることです

先入観があると、何が起きるか。考えてしまうんです。「この人に営業していいんだろうか」「どうせ無理だろうな」。考えると、手が止まります。手が止まると、足が止まります。

営業として一番大事なのは、母数を当たることです。1件1件、まず当たってみる。この当たり前のことが、先入観があると崩れます。一回一回、当たる前に頭で考えてしまうから、動きが遅くなる。これが、先入観が営業を弱くする一番の理由です。

逆に、先入観がない人はどうか。まっさらな状態なので、教えてもらったことを「まずやってみよう」となります。取り組みの第一歩が早い。ここが、一番大きな差だと思っています。

先入観は、経験を積むほど溜まっていく

厄介なのは、先入観は経験がゼロの新人より、むしろ経験を積んだ人の方に溜まっていくことです。何度か同じような相手に断られると、「このタイプの人はダメだ」という思い込みができます。一度うまくいかなかった業界・年代・立場に対して、次からは無意識に手が止まるようになります。

本部長が新人の頃から繰り返し「先入観を持つな」と言っていたのは、まだ経験が少ない、思い込みが溜まる前の段階で、この癖を先に断ち切っておいてほしかったからだと、今なら分かります。まっさらな新人のうちに聞いておいてよかったと、心から思います。

先入観がある人と、ない人の動き方の違い

この違いは、1日の営業の中に、はっきり表れます。先入観がある人は、リストの1件1件を見るたびに「ここは業種的に厳しそうだ」「この年代は難しそうだ」と、当たる前に頭の中で仕分けをしてしまいます。仕分けをしている間、手は止まっています。結果として、1日に当たれる件数そのものが減ります。

先入観がない人は、この仕分けの工程がありません。リストにある順番から、とにかく当たっていきます。当たった結果がどうだったかは、当たってみて初めて分かる。だから、同じ時間で当たれる母数が単純に多くなります。営業の成果は、最終的には「どれだけ当たったか」に比例する部分が大きいので、この差が積み重なると、月単位・年単位で大きな開きになります。

これは、正しい判断力があるかどうかの話ではありません。判断そのものを、当たる前にしてしまうかどうか、というタイミングの話です。

先入観を手放すための、具体的な考え方

先入観を完全にゼロにすることは難しいです。人間なので、経験からパターンを見出そうとするのは自然なことです。大事なのは、その先入観に気づいて、行動を止めないことです。

  • 「この人はどうせ断るだろう」と思った瞬間に、それが事実ではなく自分の思い込みだと自覚する
  • 思い込みが浮かんでも、当たる前から結論を出さない。当たってみて初めて分かる、という順番を崩さない
  • 断られた相手・業種・年代を「ダメなタイプ」として一般化しない。1件は1件の結果でしかない

結局のところ、先入観を持たない人がやっているのは特別なことではなく、「まず当たってみる」という、営業の一番基本的な動きを崩さないことだけです。

「母数を当たる」は、営業の一番の基本です

先入観の話は、結局「母数」の話に行き着きます。何が当たるかは、やってみるまで分かりません。だから、1つを完璧に仕上げてから当たるより、まず数を当たって、当たったところに力を入れる方が、営業では結果が出やすくなります。先入観は、この「まず数を当たる」という一番シンプルな動きを、当たる前の段階で邪魔してくるものです。

営業経験のない人からすると、「当たる前から結論を出さない」というのは当たり前に聞こえるかもしれません。ですが、実際に現場に立つと、これが一番難しい部分です。断られる回数を重ねるほど、無意識に「次もどうせ」という先入観が積み上がっていくからです。だからこそ、新人のうちに「先入観を持つな」と繰り返し言われることに意味があります。

勘違いしないでほしいこと

先入観を持たないというのは、何も考えずに突き進むこととは違います。相手の様子を見て言葉を選ぶこと、危険な兆候があれば警戒することは、先入観とは別の話です。ここで言う先入観とは、「当たる前から、会ってもいない相手について結論を出してしまうこと」です。当たった後にその場で判断することまで否定しているわけではありません。

「自分は向いていない」という先入観にも、同じ構造があります

先入観は、相手に対してだけ生まれるものではありません。自分自身に対しても生まれます。「自分は人見知りだから営業に向いていない」というのも、実際にやってみる前の思い込みであることがよくあります。以前の「営業に向いてない気がする。それ、本当に向いてないのか。」という記事で、人見知りな人ほど普段から相手をよく観察していて、案外営業に向いているという話を書きましたが、これも根っこは同じです。当たる前・やってみる前に、自分で自分の可能性を決めつけてしまっている、ということです。

相手への先入観も、自分への先入観も、共通しているのは「まだ何も起きていない段階で結論を出してしまう」という点です。どちらも、実際に当たってみる・やってみることでしか、本当のところは分かりません。

この教えは、採用の場でも同じだと感じます

採用にも関わる立場になって、この教えは営業だけの話ではないと感じています。応募者を見るときも、経歴や年齢、前職の業種だけで「この人はうちに合わなそうだ」と決めつけてしまうと、本当は活躍できたかもしれない人を、会う前の段階で切ってしまうことになります。書類や経歴だけで判断を固めてしまうのは、営業でいう「当たる前に仕分けしてしまう」のと同じ構造です。

これは、転職活動をしている側にも当てはまります。「この業界は未経験だから無理だろう」「この年齢では厳しいだろう」という先入観が、応募という最初の一歩を止めてしまうことがあります。応募する前から結論を出さず、まず動いてみる。営業で教わったこの考え方は、転職活動そのものにもそのまま使えると思っています。1社に絞り込んで完璧な準備をしてから動くより、まず母数を当たってみる方が、結果として自分に合う会社に早くたどり着けることがあります。

教わる側から、教える側になって伝えていること

今は自分が管理職として、部下やメンバーに教える立場です。新人が「この業種は苦手そうです」「この人は難しそうです」と言っているのを見ると、当時の本部長の気持ちが分かるようになりました。まだ当たってもいないのに、なぜそう思うのか。ほとんどの場合、答えは「なんとなく」です。根拠のある判断ではなく、ただの思い込みです。

そういうとき、伝えているのは「じゃあ、まず当たってみてから、また教えて」ということです。当たってみて本当に難しかったのなら、そこから改善を考えればいい。当たる前の段階で結論を出す必要はありません。この順番さえ守れれば、先入観に足を止められることはなくなります。

よくある疑問

先入観と、事前準備・リサーチはどう違いますか。

事前にお客様の情報を調べておくことと、先入観を持つことは別物です。調べた情報は「当たった後にどう話すか」の材料にするためのもので、「当たる価値があるかどうか」を当たる前に決めるためのものではありません。リサーチした結果、勝手に「これは無理だろう」と結論を出してしまえば、それは先入観です。

何度も断られている相手にも、先入観を持たずに当たり続けるべきですか。

同じ相手に何度も同じアプローチを繰り返すこととは違う話です。先入観を持たないというのは、新しい相手・新しい案件に対して、当たる前から結論を出さないという意味です。すでに明確に断られた相手への対応は、また別の判断になります。

先入観を持ってしまっていることに、自分では気づきにくいです。どうすればいいですか。

「当たる前に、この人は無理だと思ったかどうか」を、当たるたびに振り返ってみるのが一番早い方法です。振り返って「思っていた」と気づいたら、その回数を数えてみてください。減っていけば、先入観が薄れてきている証拠です。

まとめ

先入観は、まだ何も起きていない段階で、勝手に苦手意識や決めつけを作ってしまいます。その結果、一番大事な「まず当たる」という行動が止まります。逆に、先入観がなければ、教わったことをすぐに試せる。第一歩の早さが、そのまま差になります。新人の頃にこれを教えてもらえたことは、今振り返っても財産だと思っています。

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