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約70名の営業組織を管理してきた中で、「一番警戒していたことは何ですか」と聞かれたら、迷わず「派閥」と答えます。派閥ができること、そして派閥が作られてしまうこと。これが、組織にとって一番のマイナスだと思っています。
派閥の何が問題なのか
派閥があると、組織の雰囲気、そして働く環境そのものに大きく影響します。同じグループで固まると、そこには当然、内輪の話が生まれます。それ自体は、どんな職場にもあることです。問題は、その内輪の話の中心が、いつの間にか陰口になっていくことです。
営業中にも、実害があります。派閥内でのやり取りが増えることで、集中が切れます。本来、数字に向けるべき時間とエネルギーが、余計なやり取りに使われてしまう。これは、単なる雰囲気の話ではなく、実際の時間のロスとして表れます。
コミュニケーションには、プラスの面もあります
誤解のないように書いておきますが、社内のコミュニケーションそのものが悪いわけではありません。お互いに情報を交換して、一緒に数字を攻略していこうという、プラスの協力関係もあります。むしろ、そういう関係は歓迎すべきものです。
ただ、現場で見てきた実感としては、グループ化した人間関係のうち、プラスに働くケースより、マイナスに働くケースの方が多いです。同じグループで固まること自体が悪いのではなく、そこから生まれる空気の質が問題になります。
エスカレーションは、こう進みます
派閥の中の空気は、段階的に悪化していくことがあります。最初は、ちょっとした愚痴や陰口です。それが続くと、特定の誰かを仲間はずれにする空気ができます。さらに悪化すると、上司の悪口を、周囲を気にせず平気で口にするようになります。
これは全員に起きることではありません。ですが、こうしたネガティブな発言をする人同士は、自然と集まりやすい傾向があります。似た空気を持つ人が引き寄せ合い、グループとして固まっていきます。
健全なチームと、そうでないチームの違い
数字に向いているグループと、愚痴に向いているグループ。この2つは、見た目にはよく似ています。どちらも、休憩時間に一緒にいて、仲が良さそうに見えます。違いが出るのは、話している中身と、業務中の切り替えの早さです。
数字に向いているグループは、休憩時間には雑談をしていても、電話に戻る瞬間の切り替えが早いです。「じゃあ、いくぞ」という一言で、すぐに集中モードに戻ります。愚痴に向いているグループは、この切り替えが遅くなります。休憩時間の空気を、そのまま業務時間に持ち込んでしまう。この差が、数字の差にもつながっていきます。
それは、見えない場所で起きています
厄介なのは、こうした会話の多くが、管理職の目が届かない場所で行われることです。休憩スペース、喫煙所。会議室でも、デスクの近くでもありません。管理職が見ていない、見えないところで、その空気は育っていきます。
だからこそ、これは「一番の懸念」なのです。会議中や面談中の発言なら、その場で対処できます。ですが、休憩スペースや喫煙所で交わされる会話は、管理職の目にも耳にも届きません。届かないまま、その空気だけが広がっていきます。
負の連鎖が生まれます
一番怖いのは、ここからです。ネガティブな空気の影響を受けた人が、今度は自分自身もネガティブになっていきます。最初はそのグループに属していなかった人も、日々その空気に触れているうちに、少しずつ同じ方向に引っ張られていきます。
一人のネガティブな発言が、直接何かを壊すわけではありません。ですが、それが連鎖して広がっていくことで、組織全体の雰囲気が、気づいたときには大きく変わってしまっていることがあります。
管理職として、意識してきたこと
派閥そのものを完全になくすことは、簡単ではありません。人が複数集まれば、気の合う人・合わない人は自然に生まれます。だからこそ、意識してきたのは「派閥をゼロにする」ことではなく、「派閥の中身が数字に向いているか、愚痴に向いているか」を見ることでした。
数字に向いているグループは、放っておいても問題になりません。むしろ、お互いに刺激し合って成果を伸ばすこともあります。愚痴に向いているグループには、早めに気づいて、個別に話す機会を作るようにしてきました。グループごと変えようとするのではなく、その中の一人ひとりと、数字の話・仕事の話をする時間を意識的に増やす。それだけで、空気が変わることがあります。
職場を選ぶときの、見るポイント
転職活動をしていると、面接だけでは職場の空気までは分かりません。ですが、見学や面談の機会があれば、いくつか確認できることがあります。
- 社員同士の会話のトーン。数字や仕事の話をしているか、それとも別の話ばかりか
- 休憩スペースやオフィスの雰囲気。声を潜めた会話が多い職場は、注意して見た方がいいです
- 面接官自身が、前職や他部署について話すときの言葉選び。建設的に話すか、感情的に下げるかで、その組織の文化がある程度見えてきます
全員がそうなるわけではありません
ここまで書いてきたことは、すべての人に当てはまるわけではありません。同じ職場にいても、派閥に加わらず、自分のペースで数字と向き合い続ける人もいます。ネガティブな発言をする人たちが自然と集まりやすい、という傾向を書いているだけで、全員がそうなるという話ではありません。
採用の場面でも、この視点を持っています
面接では、この「見えないところでの空気」を直接確認することはできません。ですが、採用する立場として、この懸念は常に頭にあります。以前「廊下での発言を、採用担当は見ています。」という記事で、面接の外での言動から人柄が透けて見える話を書きましたが、根っこにある懸念は同じです。誰も見ていない場所で、その人がどう振る舞うか。それが、組織に加わった後の空気に直結します。
面接の中で、前職の同僚や上司について聞かれたときの話し方にも、同じことが表れます。具体的な不満を建設的に話せる人と、感情的に周りを下げるような話し方をする人とでは、見えているものが違います。
転職を考える側にとっても、大事な視点です
これは、採用する側だけの話ではありません。転職先を選ぶ側にとっても、同じ視点は役に立ちます。面接や説明会で、社員同士の会話の雰囲気、休憩スペースの空気を見る機会があれば、それとなく観察してみてください。声のトーン、表情、話している内容。派閥化した空気がある職場は、意外と外からも見えることがあります。
そしてもう一つ、自分自身がその一員にならないという意識も大事です。新しい職場に入ったとき、最初にできたグループの空気に流されず、自分がどちらの側に立つかを選ぶことができます。数字に向き合う人と一緒にいるか、愚痴に向き合う人と一緒にいるか。この選択は、思っている以上に、その後のキャリアに影響します。
よくある疑問
派閥に入らないと、職場で孤立しませんか。
派閥に入らないことと、孤立することは違います。特定のグループに属さなくても、個別に信頼関係を作ることはできます。むしろ、特定のグループに偏らない方が、社内の広い範囲で信頼を得やすいことも多いです。
すでにできあがっている派閥的な空気を、一人の力で変えられますか。
一人で組織全体の空気を変えるのは簡単ではありません。ただ、自分自身がその連鎖に加わらないという選択は、いつでもできます。連鎖に加わらない人が増えていけば、少しずつ空気は変わっていきます。
面接で、前職の人間関係について聞かれたときは、どう答えればいいですか。
具体的な不満があったとしても、感情的に相手を下げる話し方は避けた方がいいです。「こういう状況で、自分はこう対応した」というように、事実と自分の行動をセットで話すと、聞いている側には誠実に伝わります。
数字が良ければ、多少ネガティブな空気があっても問題ないですか。
短期的には問題が見えにくいこともあります。ですが、負の連鎖は時間をかけて広がるものなので、数字が良い時期ほど、見えないところの空気を軽視しない方がいいです。数字が落ちてから気づいたときには、空気の方はすでに根深くなっていることが多いです。
まとめ
派閥ができることは、組織にとって一番のマイナスだと感じています。休憩スペースや喫煙所という、見えない場所で育っていく空気は、管理職の目には届きにくく、それでいて負の連鎖として組織全体に広がっていきます。採用する側としても、転職先を選ぶ側としても、この「見えないところ」への意識を持っておくことが、いい環境で働き続けるための一つの武器になると思っています。
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