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先日、ある経営者の密着動画をたまたま見ました。児童養護施設で育ち、19歳でテレアポの仕事に入り、営業コンテストで2年連続日本一。20代で独立して、法人営業に特化した会社を数年で年商数億円規模に育てた人です。
その人が話していたことで、印象に残った一言があります。「営業コンテストで結果を出すために、訪問先の企業をとことん調べて、提案書を作り込む習慣がついた。それが後から振り返ると、大きな企業を相手にできる武器になっていた」という話です。
私は営業ひとすじ20年、約70名の営業組織をマネジメントし、採用にも関わってきました。この話を聞いて、自分が見送ってきた何百人もの人たちの顔が浮かびました。結果を出す人と出ない人の差は、実は派手な才能ではなく、こういう地味なところにあることが多いのです。この記事では、その「差」の正体と、それが転職市場でどう評価されるかを書きます。
「準備している人」と「していない人」の差は、数字にすぐ出る
テレアポや営業の現場を長く見てきて思うのは、結果を出し続ける人ほど、電話をかける前・訪問する前の準備に時間をかけているということです。相手の会社が何をしている会社か、どんな課題を抱えていそうか、今どんなタイミングにあるか。ここを調べてから話すのと、リストを上から順にかけるだけなのとでは、同じトークスクリプトを使っていても結果がまったく違います。
面白いのは、この差は本人にはなかなか自覚されないということです。「自分は向いていないから結果が出ない」と思い込んでいる人の多くは、実際には準備の質が足りていないだけだったりします。逆に「自分は向いている」と思っている人ほど、準備を飛ばして勢いだけで押していることもあります。
私がこれまで見てきた未達のメンバーには、いくつかの共通したパターンがありました。クロージングのタイミングがずれている、提案の数そのものが足りていない、提案した後の受注率が低い、そして「伺い口調」で言い切れず背中を押しきれない。同じ商材・同じリスト・同じスクリプトを使っているのに、これだけの差が出るのを何度も見てきました。原因は商材やリストではなく、多くの場合、個人の準備と姿勢にあります。
準備の差は、「うまくいかない時」にこそ出る
うまくいっている時は、誰でもそれなりに見えます。差が本当に出るのは、うまくいかない時です。
断られ続けた時に、何が悪かったのかを振り返って次の準備に活かす人と、ただ「今日はついてなかった」で終わらせる人。私が見てきた限り、改善されない人にはだいたい2つのパターンがあります。ひとつは自分に甘く、注意されても生返事で「わかりました」と言うだけで、実際には同じことを繰り返してしまうタイプ。もうひとつは、断られ続けてしんどくなり、考えること自体をやめてしまうタイプです。どちらも、根性論だけの職場では改善の手が打たれないまま放置されがちです。
逆に言えば、この2つのパターンにはまらず、うまくいかない時こそ「何を調べ直すか」「次はどう準備するか」に頭を使える人は、時間はかかっても確実に伸びていきます。冒頭の経営者の話も、まさにこれでした。コンテストで結果が出ない時期に、たまたま企業研究や提案書の作り込みを始めた。それを続けたことが、後から振り返ると大きな差になっていた、という話です。
トップ実績は、そのままではアテにならない
ここで一つ、誤解してほしくないことがあります。「営業成績トップ」という実績そのものは、実はそれほどアテにならないということです。
同じ「トップ営業」でも、商材・ターゲット・タイミングによって難易度はまったく違います。競合の少ない商材でトップを取るのと、レッドオーシャンの中でトップを取るのとでは、意味がまったく別物です。冒頭の経営者も、通信業界について「業界全体で営業のクオリティがあまり高くない」と自分から話していました。これは謙遜ではなく、レベルの低い競争環境でトップを取ることの限界を、本人が一番よく分かっているということだと思います。
だから、転職活動で自分の実績を語るときも、「トップだった」という結果だけを並べるのは、実はあまり強い武器になりません。転職エージェントや面接官が本当に知りたいのは、その結果を生んだ「準備のプロセス」の方です。どんな仮説を立てて、何を調べて、うまくいかない時に何を変えたか。ここまで言語化できて、初めて実績が「再現性のある強み」として評価されます。
準備は「量」より「相手を見ているか」で差が出る
ここで一つ、勘違いしやすいポイントを書いておきます。準備というと、「とにかく調べる量を増やせばいい」と思われがちですが、実はそうではありません。
私が見てきた中で本当に成果を出していた人は、調べる量そのものより、「この相手には何が刺さるか」を考える質にこだわっていました。同じ業種でも、会社の規模や成長段階によって、響く言葉はまったく違います。人手不足に悩んでいる会社に効率化の話をしても響きませんし、逆に効率化を求めている会社に「まずは人を増やしましょう」と言っても的外れです。冒頭の経営者も「相手によって話し方をまるごと変える」と話していました。これは決して器用貧乏な話ではなく、相手をよく見た結果、自然とそうなっているのだと思います。
ただし、これを最初から完璧にやろうとすると、準備だけで時間が溶けてしまいます。現実的には、①相手の事業内容、②今困っていそうなこと、③自社が役に立てそうな接点、この3つだけを事前に整理しておく、くらいの軽さで十分です。完璧な準備より、続けられる準備の方が、結果的に力になります。
準備しすぎて、逆に硬くなる人もいる
ここまで準備の大切さを書いてきましたが、逆のパターンもあることを伝えておきます。準備しすぎて、台本通りにしか話せなくなってしまう人です。
用意した提案書やトークスクリプトに沿うことに気を取られすぎて、相手が想定外の反応をした瞬間に固まってしまう。これも、私が現場でよく見てきた失敗パターンです。準備は「相手の反応を予測して備えるもの」であって、「決められた台本を読み上げるもの」ではありません。この違いを取り違えると、せっかくの準備がかえって会話を不自然にしてしまいます。
コツは、準備した内容を「引き出し」として持っておき、実際の会話では相手の反応を見ながら、その引き出しから必要なものだけを出す、という感覚を持つことです。これは場数を踏むうちに自然と身についていくもので、最初からうまくできる人はほとんどいません。うまくいかない時期があるのは当たり前で、そこで諦めずに引き出しを増やし続けられるかどうかが、次の差になります。
テレアポ・営業の下積みは、転職でどう見られるか
「自分はただ数をこなしていただけで、大したスキルは身についていない」と感じている人は、意外と多いです。でも、実際に採用する側の立場から言うと、そう感じている人ほど、準備の習慣が無自覚に身についていることがよくあります。
面接や職務経歴書で評価されやすいのは、「架電数◯件」「アポ獲得率◯%」のような数字だけではありません。むしろ、「なぜその数字が出せたか」を、自分の言葉で説明できるかどうかです。たとえば、「決裁者が不在の時間帯を避けて架電時間を調整した」「業種ごとに刺さる切り口が違うことに気づいて、トークを出し分けた」といった、準備や工夫の跡がある話は、面接官の記憶に残ります。
逆に、実績の数字だけを並べて、その裏にあるプロセスを聞かれても答えられない場合、面接官は「たまたま良い環境にいただけかもしれない」と受け取ります。これは意地悪な見方ではなく、前の章で書いた「トップ実績は環境次第で難易度が違う」という当たり前の事実を、面接官もよく分かっているからです。
準備の習慣を、職務経歴書でどう言語化するか
ここまでの話を、実際の転職活動にどう落とし込めばいいか、具体的に書きます。
まず、自分がこれまでやってきた「準備」を棚卸ししてみてください。訪問前に何を調べていたか、断られた後に何を見直していたか、成績が伸びた時期に何を変えたか。派手なことである必要はありません。「業界紙を読むようにした」「先輩の商談に同席させてもらって切り返しをメモした」というような、地味なことで構いません。
次に、その準備が結果にどうつながったかを、数字と一緒にセットで語れるように整理します。「準備を変えたら、アポ獲得率が◯%から◯%に上がった」という形です。数字だけでも、準備だけでも弱く、両方がセットになって初めて説得力が出ます。
最後に、これは今の職場だけでなく、次の職場でも再現できることだと伝えます。「この業界特有のやり方」ではなく、「相手を調べて仮説を立て、うまくいかなければ修正する」という姿勢そのものが、業種を問わず通用する準備の型だからです。ここまで語れると、単なる実績自慢ではなく、「この人は次の環境でも同じように結果を出せそうだ」という評価につながります。
具体的な言い回しの例を挙げると、「訪問前に業界紙やニュースリリースを確認し、相手企業が直近で力を入れていそうな領域を仮説として持ってから商談に臨んでいました。的外れな提案を減らせただけでなく、商談の初動で相手の反応が変わることを実感しました」というような書き方です。ポイントは、①何をしたか、②なぜそうしたか、③結果どうなったか、の3つを1セットで書くことです。この3点セットがあると、面接官は「この人は次の職場でも、同じ考え方で動けそうだ」と想像しやすくなります。
準備が習慣になっている人ほど、転職でも失敗しにくい
もう一つ、意外と見落とされがちな話をします。準備を大事にする習慣は、転職活動そのものにも同じように効きます。
私は採用にも関わってきた立場として、面接で「なぜうちの会社なのか」という質問に、ホームページを見ただけの浅い答えしか返せない人を何人も見てきました。逆に、事業内容や最近の動き、場合によっては競合との違いまで調べた上で質問してくる人は、それだけで印象がまったく違います。これは、営業で相手企業を調べる習慣がある人なら、実はそれほど難しいことではありません。今までやってきたことを、転職活動という新しい場面に応用するだけです。
逆に言うと、今の仕事で結果が出ていない、準備の習慣がまだ身についていないと感じている人ほど、転職活動を「準備の練習」として使うこともできます。応募する企業を一社ずつ丁寧に調べる、面接で聞かれそうなことを想定して答えを用意しておく。この積み重ねは、次の職場での営業活動にもそのまま活きてきます。
「向いていない」という思い込みが、準備の手を止める
ここまで準備の話を続けてきましたが、そもそも準備をする気力すら湧かない、という人もいると思います。その背景には、「自分はこの仕事に向いていない」という思い込みがあることが多いです。
これは私がこれまで何度も見てきたことですが、「自分は向いていない」と言う人ほど、実は向いていることがよくあります。理由は単純で、人見知りだったり内向的だったりする人は、普段から相手の顔色や様子をよく観察しているからです。営業で本当に大事なのは、勢いよく話すことよりも「相手をよく見る」ことです。逆に「自分は向いている」と自信満々な人ほど、一方的な営業になりやすく、押しすぎて相手を疲れさせてしまうこともあります。もちろん、天性で向いている人もいるので一概には言えませんが、「向いていない気がする」という感覚だけで準備すら諦めてしまうのは、あまりにもったいないです。
先入観や固定観念は、営業という仕事において一番の足かせになります。「自分にはできない」が口癖になっている人ほど、外からのきっかけがないと変われません。もし今、この記事を読んで「準備なんて自分には向いていない」と感じたなら、それこそが思い込みかもしれません。まずは前の章で書いた3つの項目(相手の事業内容・困っていそうなこと・自社の接点)だけを、次の1件だけ試してみてください。
一人で準備しきれないなら、頼っていい
ここまで「準備が大事」と書いてきましたが、転職活動における企業研究や自己分析を、すべて一人でやり切るのは正直かなり大変です。忙しい仕事の合間に、応募先企業を一社ずつ深く調べる時間を確保するのは、想像以上に負担になります。
そういうときこそ、転職エージェントを使う意味があります。エージェントは応募企業の内部事情や、過去にどんな人が受かって、どんな人が落ちたかといった情報を持っています。自分一人で集められる情報には限界がありますが、そこをエージェントに補ってもらうことで、準備の質を底上げできます。
一人で「このままでいいのか」と抱えて時間だけが過ぎるより、一度きちんと話して整理したほうが、次の一歩は早く見つかります。UZUZは第二新卒に特化していて、ブラック企業を避けた求人から紹介してくれます。登録は無料で、数分で終わります。合わなければ断ってかまいません。迷っているなら、選択肢の一つとして知っておくだけでも損はありません。
面接官は、準備の「本物とニセモノ」を見分けている
最後に、採用する側の視点をもう少し詳しく書いておきます。面接で「御社を志望した理由」を聞かれて、暗記した志望動機をそのまま話す人と、その場で自分の言葉として話せる人は、聞いていればすぐに分かります。
見分けるポイントは、深掘りの質問への反応です。「なぜそう思ったのですか」と一段掘り下げて聞いたときに、用意していた回答をそのまま繰り返す人と、その場で少し考えて、自分の経験と結びつけて答えられる人がいます。後者は、表面的な情報を暗記したのではなく、本当にその会社について考え、自分なりの仮説を持って臨んでいることが伝わってきます。
これは営業の商談とまったく同じ構造です。台本を読み上げるだけの営業と、相手の反応を見ながら引き出しから言葉を選べる営業。面接官は、無意識のうちにこの違いを見ています。だからこそ、準備は「暗記」ではなく「自分の言葉にできるまで考えること」を目指してください。時間はかかりますが、この差は面接という短い時間の中でも、驚くほどはっきり伝わります。
まとめ
結果を出し続けている人と、そうでない人の差は、才能そのものよりも「準備の習慣」にあることが多いです。うまくいかない時にこそ、その差ははっきり出ます。そして、実績の数字そのものより、それを生んだ準備のプロセスを語れることの方が、転職市場では評価されます。
もし今、自分の営業経験に自信が持てずにいるなら、一度「自分がどんな準備をしてきたか」を振り返ってみてください。地味に見えることの中に、次の職場でも通用する、あなただけの武器が隠れているかもしれません。
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この記事を書いた人
営業ひとすじ20年。電話営業・インサイドセールスの現場から始まり、約70名の営業組織のマネジメントを経験。採用面接にも数百人単位で関わってきました。「辞めて正解だった人」も「辞めなくてよかった人」も見てきた立場から、テレアポ・インサイドセールス・営業職の次のキャリアについて、きれいごとではない話を書いています。


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