スカウトの面談で「経営にも携わってほしい」と言われました。舞い上がらなかった理由を、採用担当として書きます。

スカウトの面談で「経営にも携わってほしい」と言われました。舞い上がらなかった理由を、採用担当として書きます。 コラム



先日、あるスカウトの面談で、こう言われました。

「ゆくゆくは、経営にも携わっていただきたいと思っています」

その場では、特に問題なく話は進みました。悪い印象はまったくありません。
でも正直に言うと、そこまで舞い上がりはしませんでした。

喜んでいい場面のはずです。実際、悪い気はしませんでした。
それでも心のどこかは、わりと冷静なままでした。

なぜそうなったのか。採用する側にも立ってきた人間として、そのときに頭の中で起きていたことを、正直に書きます。

そのポジションの「次」は、もう役員しかない

今回お話をいただいたポジションは、現場の複数のマネージャーをさらにまとめる立場でした。
つまり、組織図で言うと、もう1段階上がったら、その先は役員クラスしかない場所です。

ここに気づいた瞬間、「経営にも携わってほしい」という言葉が、少し違って見えました。

それは、特別な期待の言葉というより、組織図が素直に導く、論理的な帰結だったからです。
そのポジションを任せる以上、次のステップとして経営に触れる話が出てくるのは、ある意味で当然です。特別に見込まれたというより、役職が上がればそういう話になる、というだけの話です。

だから、話半分で聞きました。悪い言葉ではないけれど、まだ約束された言葉でもない。そう受け止めました。

採用する側から見ると、この言葉はよく出てくる

ここから先は、採用にも関わってきた立場としての話です。

「ゆくゆくは経営にも」「将来的には役員も視野に」。
こうした言葉は、候補者の背中を押すために、面談やスカウト文面でわりとよく使われます。

誤解してほしくないのですが、これは嘘をついているという意味ではありません。
本当にそう思って言っている場合がほとんどです。
ただ、「思っている」ことと「決まっている」ことは、別のものです。

採る側の立場で振り返ると、こうした言葉を使うタイミングは、だいたい決まっています。
候補者に「ここで働く未来」を具体的にイメージしてもらいたいときです。
悪気はありません。むしろ、本気で口説きたいからこそ出てくる言葉です。

でも、口説き文句と実際の人事は、別の場所で決まります。

これは、役員候補に限った話ではありません

ここまで「経営にも携わってほしい」という、少し大きな言葉を例に書いてきました。
でも、構造としては同じことが、もっと身近な場面でも起きています。

  • 「ゆくゆくはリーダーを任せたい」
  • 「将来的にはマネージャーも視野に」
  • 「あなたなら、この先の幹部候補になれる」

役職の大きさが違うだけで、言葉の構造は同じです。
面談で候補者に前向きな気持ちになってもらうために、少し先の未来を見せる。これは採用の現場で、ごく自然に行われていることです。
だから、これから書くことは、経営や役員という言葉に限らず、「将来的には」という言葉全般に当てはまります。

「経営に携わってほしい」を聞いたときに、確認すべきこと

この言葉自体を疑う必要はありません。
確認すべきなのは、その言葉の「中身」です。

  • 実際に、同じような立場から上がった人はいるか。前例のない話は、前例のない分だけ不確実です。「これまでに、そのポジションから上に行かれた方はいらっしゃいますか」と聞いて、具体的な人の話が返ってくるか、それとも「これから作っていく」という答えが返ってくるかで、重みがまったく違います。
  • 時期の話は出ているか。「ゆくゆくは」だけで終わる話と、「◯年後をめどに」まで出てくる話では、重みがまったく違います。時期が曖昧なままの話は、何年経っても「ゆくゆくは」のままということが起こり得ます。
  • 誰の判断で決まるのか。面談で好感触を持ってくれた人に、実際にそれを決める権限があるとは限りません。「これは、どなたの判断で決まるものですか」は、失礼にならない範囲で聞いていい質問です。
  • 会社そのものの体力はあるか。役員登用の話がどれだけ魅力的でも、会社の財務が不安定なら、そのポジション自体がなくなるリスクがあります。

これは、相手を疑っているわけではありません。
魅力的な言葉ほど、中身を確認したほうがいいというだけの話です。むしろ、まともな会社ほど、こういう質問をされて嫌な顔はしません。逆に、こうした質問に対して曖昧な答えしか返ってこない、もしくは質問自体を嫌がる空気を出す会社は、それ自体が一つの判断材料になります。

疑っていると思われずに聞く、ひとつの言い方

とはいえ、面談の場でこうした質問を並べると、「品定めをされている」と感じさせてしまわないか、気になる方もいると思います。
私自身、聞き方には気をつけています。

おすすめなのは、疑問形ではなく「教えてください」という形で聞くことです。
「本当にそうなんですか」ではなく、「もし差し支えなければ、これまでに近い形で上がられた方の話を伺えますか」というように、興味・関心として聞くと、角が立ちにくくなります。

採る側の立場で言うと、こういう聞き方をしてくる候補者は、むしろ好印象です。
自分のキャリアを真剣に考えている証拠だからです。「入ってから困らないように、今のうちに確認しておきたいんです」と一言添えれば、なおさら伝わります。

正直に言うと、今もかなり悩んでいます

ここまで、わりと冷静に書いてきました。
でも、誤解してほしくないので正直に書きます。舞い上がらなかった、というのは、迷いがないという意味ではありません。

今の話とは別に、今の環境をどうするか、この先どう働いていくかについては、正直かなり悩んでいます。
「経営に携わってほしい」という言葉に踊らされなかったのは、その悩みの答えが、その言葉ひとつで決まるようなものではないと分かっているからです。

魅力的な言葉をかけられたときほど、その言葉とは別に、自分が本当に迷っている理由に向き合う必要があります。
言葉に気持ちが持っていかれると、その迷いをうやむやにしたまま、決めてしまうことがあるからです。

同じ言葉をかけられた人へ

もし今、似たような言葉をスカウトや面談でかけられているなら、伝えたいことがあります。

喜んでいいです。でも、それだけで決めなくていいです。

「経営にも携わってほしい」「将来は役員も」。
こうした言葉は、あなたを評価してくれているサインではあります。そこは素直に受け取っていいと思います。

ただ、その言葉の中身を確認する作業と、その言葉に感情を動かされることは、別々にやったほうがいいです。
中身を確認したうえで、それでも心が動くなら、それは本物の判断材料です。
でも、言葉だけで決めてしまうと、後になって「あのとき、何を確認すればよかったのか」を、入社してから知ることになります。

まとめ

  • 「経営にも携わってほしい」という言葉は、そのポジションの組織図から見て、論理的に出てくる場合があります。特別扱いとは限りません。
  • 採る側は、候補者の背中を押すためにこうした言葉を自然に使います。悪意ではなく、本気の口説き文句です。
  • 確認すべきは、前例・時期・決定権・会社の体力の4つです。
  • 舞い上がらないことと、悩まないことは別です。魅力的な言葉とは関係なく、自分の中にある迷いには正直に向き合う必要があります。

スカウトの面談は、これからも続きます。
今回の話がどうなるかは、まだ分かりません。
分かったときには、また正直に書きたいと思います。

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※本文の内容は、筆者自身の体験・実感であり、統計データではありません。

この記事を書いた人

営業ひとすじ20年。電話営業・インサイドセールスの現場から始まり、約70名の営業組織のマネジメントを経験。採用面接にも数百人単位で関わってきました。「辞めて正解だった人」も「辞めなくてよかった人」も見てきた立場から、テレアポ・インサイドセールス・営業職の次のキャリアについて、きれいごとではない話を書いています。

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