壁がボロボロ剥がれる一室から、電話営業の組織を立ち上げた話。

壁がボロボロ剥がれる一室から、電話営業の組織を立ち上げた話。 コラム




これは、いつもの実務解説記事とは少し違う、筆者自身の体験をそのまま書いたコラムです。

前回、あるコラムで「一度、逃げるように辞めた話」を書きました。あの会社で結局、通算12年働きました。今回は、そこを離れて次の会社に移った後の話です。

転職した先では、最初はプレイヤーとしてのスタートでした。そこから権限をもらって、電話営業の組織をゼロから立ち上げることになったんです。

机と電話しかなかった、最初の日

正直に言います。立ち上げ当初のオフィス、お世辞にも綺麗とは言えませんでした。

すごく古いビルの一室で、壁がボロボロ剥がれ落ちてるような場所です。空調も正直あまり効いてなかった気がします。そこに机を並べて、パソコンとヘッドセットを用意して、電話営業の組織を一からスタートさせました。

今の自分たちを知ってる人からしたら、多分想像もつかないと思います。でも、本当にそういう場所からのスタートでした。看板もなければ、実績もない。あるのは、これから作っていくしかないという状況だけです。

最初の日、集まってくれたメンバーの顔を見ながら、正直かなり不安でした。この人たちに、ちゃんと数字を出してもらえる環境を作れるのか。自分自身、マネジメントの経験もまだ浅かった時期です。プレイヤーとして結果は出していたつもりでしたけど、組織を作るというのは、まったく別の力が要ることを、あの頃はまだ肌で分かっていませんでした。

立ち上がりの3ヶ月がいちばんきつい

これは、この組織に限った話じゃなく、テレアポやインサイドセールスの世界全体に言えることだと思うんですけど、最初の3ヶ月がいちばんの山です。

「こんなにきついのか」と思う瞬間が、必ずどこかで来ます。それは新しく入ったメンバーだけじゃなく、立ち上げてる自分自身にも同じことが言えました。数字が思うように立たない。架電しても架電しても、なかなか結果に繋がらない。壁が剥がれ落ちてる部屋で、電話の音だけが響いてる時間が、正直しんどかったです。

ただ、その中でもPDCAをちゃんと回せていれば、後になって「こんなはずじゃなかった」という結論にはならないんですよね。うまくいかない部分を掘り下げて、次の稼働で試みる。この繰り返しができていれば、想定通りきつかった、でも自分たちでできることはやった、という納得感が残ります。

立ち上げ期は特に、この振り返りのサイクルをどれだけ丁寧に回せるかが、後々の組織の土台になっていく気がします。

現場から見た景色は、また違ったと思う

ここまでは、どちらかというと管理する側からの景色です。ただ、実際に電話をかけていたメンバーから見た景色は、また違ったはずです。

壁が剥がれ落ちるような部屋で、実績もない自分たちが言うことを、それでも謙虚に受け止めて、素直にやってみてくれた。これは、後になって振り返るとすごいことだと思っています。

指導した内容を、まず一度そのまま試してみる。自己流を先に試すんじゃなくて、言われたやり方を実際にやってみてから、うまくいかない部分を掘り下げて、次の稼働で試みる。この順番を守れる人が、結局は数字を伸ばしていきました。逆に、自分のこれまでの経験則にこだわって、指導された内容を素直に受け入れなかった人は、なかなか結果に繋がりませんでした。

きっと、あの頃のメンバーには、すごく不安があったと思うんです。この組織、本当にこのままやっていけるのか。この人についていって大丈夫なのか。そう思っても、おかしくない環境でした。それでも、日々の仕事を投げ出さずに続けてくれた。その姿勢が、結果的に自分たちの土台を作ってくれたんだと思っています。

今も残ってくれてる人がいる

その時のメンバー、今も残ってくれてる人がいます。この人たちには、本当に感謝しかないです。

壁が剥がれ落ちるような部屋で、こっちの言うことに謙虚に取り組んでくれた。多分、すごく不安だったと思うんです。それでも続けてくれた。

正直、あの環境で最初から100点満点の組織を作れていたわけじゃありません。むしろ、手探りだらけでした。それでも離れずにいてくれた人たちがいたから、次のステップに進めたんです。その人たちがいなかったら、今の自分たちはなかったと、本気で思っています。

5人、50人、100人。規模が変わると、全部変わる

組織って、5人の時と、50人の時と、100人の時で、マネジメントの仕方が全然違うんですよね。働いてる側にとっても、多分全然違う感覚だったと思います。

5人だった頃は、一人一人の顔を見ながら、その日の調子まで把握できていました。誰が今日ちょっと元気ないなとか、誰が昨日できなかったことが今日できるようになったなとか、そういう小さな変化にすぐ気づける規模です。

それが50人になると、もう全員の顔を毎日見て回るだけでも大変になってきます。チームをいくつかに分けて、リーダーを置いて、という仕組みを作らないと回らなくなってくる。コミュニケーションの取り方も、一対一から、チーム単位に変わっていきました。

一時期は組織として100人近くまで行きました。ここまでくると、もう自分一人がすべてを把握するという発想自体が通用しません。休憩時間の過ごし方一つとっても、5人の頃と100人の頃では全然意味合いが変わってきます。小さい組織なら自然に生まれていた雑談やちょっとした声かけが、規模が大きくなるほど意識して作らないと生まれなくなっていく。これは、後になって痛感したことです。

営業の世界なので、入ってはすぐ辞めていく人の出入りも、当然ありました。ここは正直、割り切るしかない部分でもあります。全員が長く残ってくれるのが理想ではあっても、現実にはそうならない。それでも、辞めていった人たちの経験も、組織にとっては何かしらの学びになっていたと思っています。

雇用形態は、当事者意識とは関係なかった

これは組織を作っていく中で、はっきり分かったことです。派遣なのか正社員なのか、雇用形態と当事者意識の高さは、まったく関係ありませんでした。

派遣という立場でも、驚くほど当事者意識の高い人がいました。逆に、社員という立場でありながら、指示待ちで終わってしまう人もいました。契約の形が、その人の意識を決めるわけじゃないんです。

見分け方があるとすれば、昨日できなかったことが今日できるようになっているかどうか、そこに尽きると思います。派手な成果じゃなくていいんです。昨日うまく言えなかった切り返しが、今日少しだけ言えるようになった。それだけでも、当事者意識を持って取り組めている証拠でした。

失敗は、失敗だと思ったことがあまりない

こう書くと、色々失敗もあったんだろうなと思われるかもしれません。実際ありました。でも、正直、それを失敗だと思ったことはあまりないんです。

全部、未来のための投資だと思ってました。経験は、経験そのものが投資になる。だから、その経験を無駄にする、次に繋げない。それだけは完全に意味がないと思ってます。

数字が上がらないメンバーがいた時、本人だけの責任にしなかったのも、この考え方が根っこにあります。未達の原因は、本人よりも上司にあることの方が多いです。リストの質、打ち手、環境。そういうものをちゃんと整えて、言い訳ができない状態を作るのが、上司の一番大事な仕事だと思っています。これは、他責にしていいという話とは違います。整った環境の中で、それでも動けるかどうかは、最終的には本人次第です。ただ、その環境を整える責任は、こちら側にあるということです。

うまくいかない時期ほど、その人の本性が出ます。環境のせいにして止まってしまう人もいれば、うまくいかない現実を受け止めて、それでも次の一手を考え続ける人もいました。この差は、後になって振り返ると、本当にはっきり出ていたと思います。

損益分岐点を見ながらの拡大

ゼロから立ち上げてる以上、会社からもらってる投資に応えないといけない責任がありました。だから、生産性とか、損益分岐点とか、そういうところはちゃんと把握した上でやってました。

人を増やせば増やすほどいいという単純な話ではありません。増やした分だけ、教育のコストもかかるし、まとまるまでの時間もかかります。どこまで拡大していいラインなのか、常に数字を見ながら判断していく必要がありました。感覚だけで突っ走ると、必ずどこかで無理が出ます。組織を預かるというのは、こういう地味な数字との向き合いも含めての仕事なんだと、あの頃に学びました。

最後に

壁がボロボロの部屋から始まって、5人が50人になって、一時は100人近くまでいきました。

きれいな成功物語のつもりで書いてるわけじゃないです。手探りで、不安だらけで、失敗もたくさんありました。今も初めて経験すること、手探りな状況も生まれますし、なにより不安で。それでも、あの部屋で最初に一緒にいてくれた人たちのことは、今でもちゃんと覚えています。

これを読んでる、今どこかで小さな組織を立ち上げようとしてる人へ。環境が整ってなくても、大丈夫です。残ってくれる人は、残ってくれます。そして、その人たちとの積み重ねが、いつか組織の土台になっていきます。

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※本文の内容は、筆者が約70名の営業組織を管理してきた中での実体験・実感であり、統計データではありません。

この記事を書いた人

営業ひとすじ20年。電話営業・インサイドセールスの現場から始まり、約70名の営業組織のマネジメントを経験。採用面接にも数百人単位で関わってきました。「辞めて正解だった人」も「辞めなくてよかった人」も見てきた立場から、テレアポ・インサイドセールス・営業職の次のキャリアについて、きれいごとではない話を書いています。

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