AIに全部作らせたら、営業目線とずれた。補助ツールとして使うと決めた理由。

AIに全部作らせたら、営業目線とずれた。補助ツールとして使うと決めた理由。 コラム

他社のサービスを比べる資料や記事を作るとき、私はAIを使っています。ただし、使い方は「全部任せる」ではありません。前に一度、全部作らせてみたところ、営業の目で見ると違う答えが返ってきたからです。今は、情報の整理までをAIに任せて、その内容が正しいかどうかの確認は自分でやっています。この記事では、その使い方に落ち着いた経緯と、確認作業の中で実際に起きたことを書きます。営業歴20年、約70名の営業組織を見てきた立場から、AIを「補助」として使うときの考え方をまとめました。

以前は、比較資料をすべて人の手でまとめていました

他社のサービスと比べる資料は、作るのに手間がかかります。それぞれの公式ページを開いて、料金や条件、特徴を一つずつ拾う。拾った情報を表にまとめて、同じ基準で並べ直す。やっていることは単純ですが、比べる相手が増えるほど、時間はどんどん取られていきます。

営業の現場でも、競合と自社を比べる資料を作る場面はよくあります。お客さまに選んでもらうためには、違いが分かる形で見せる必要があるからです。ただ、その資料づくりに時間を使いすぎると、本来やるべきお客さまとのやり取りの時間が削られてしまいます。この作業をAIに手伝ってもらえたら、確かに楽になる。そう思って、使い始めました。

最初は、AIに全部作らせてみました

最初は、材料の集め方から比べ方の整理まで、すべてAIに作らせてみました。出てきた文章は整っていて、表の形にもなっていました。見た目は、読みやすい資料です。

ただ、営業の目で見ると、私が知りたかった答えとは違っていました。間違っている、というほどではありません。一般的にまとまってはいるのですが、使える資料にはならなかったのです。

営業として比較資料を見るとき、知りたいのは「一般的に何が違うか」だけではありません。お客さまが迷うのはどこか。判断が分かれるのはどこか。そういう見方は、現場で同じ場面を何度も見てきた人の目線です。AIが最初から持っているものではないと、このとき感じました。整ってはいるけれど、営業として使える答えではない。その差を感じたのが、使い方を見直すきっかけでした。

料金や解約の条件は、数か月で変わる商材もあります

もう一つ、うまくいかなかったことがあります。扱う業種によっては、料金プランや解約金の条件が、数か月単位でころころ変わる商材があるのです。キャンペーンの内容が入れ替わったり、条件が改定されたりするためです。こういう商材では、求めている答えが返ってこないことがありました。

AIの答えは、学習した時点の情報や、古いページの内容をもとにしていることがあります。そのため、今の条件とはずれた説明が、自然な文章で出てくることがあります。変わりやすい情報ほど、AIの答えをそのまま信じるのは危ないと考えています。

任せ方を変えました。情報は自分で集めて、整理だけAIに頼みます

そこで、AIの使い方を変えました。今は、次の流れで進めています。

  • 比べたい相手の情報を、自分で全部集める
  • 集めた情報を、すべてNotebookLMに入れる
  • 比較できる形に、整理してもらう

NotebookLMは、自分で入れた資料(ソース)をもとに整理や要約をしてくれるGoogleのツールです。2026年7月に「Gemini Notebook」へ名称が変わりましたが(Google公式ブログ)、この記事ではこれまでの呼び方のNotebookLMと書きます。材料を選ぶのは人間なので、AIが扱う情報は、自分が用意したものが中心になります。ただし、それでも内容が合っているかの確認は欠かせません。AIは「今渡された情報を、どう並べるか」を担当する。「何を材料にするか」は自分が決める。この役割分担にしてから、ずいぶん使いやすくなりました。

ここで大事なのは、あくまで補助ツールだという位置づけです。以前は人の手でまとめていた資料の作成を、AIに置き換えて、手間を減らす。そのための道具として使っています。AIに考えさせて答えをもらう、という使い方ではありません。

なお、入れた資料が古ければ、整理された結果も古くなります。どの情報を入れるかを決める段階で、その情報がいつ時点のものかを見ておく必要があります。材料選びの責任は、最初から最後まで人間側にあります。

一番大事にしているのは、正確さです

この使い方をする中で、私が一番大事にしているのは、正確さです。

比較資料の役割は、読んだ人が正しく判断できるようにすることです。数字や条件が間違っていたら、どれだけ読みやすくても、資料としては役に立ちません。営業でも同じです。間違った情報を伝えてしまうと、お客さまの判断を誤らせてしまいます。そして、一度失った信用は、簡単には戻りません。

AIがまとめてくれたものを、そのまま出すことは、私はしません。間違いがないかを最後に確認するのは、人間の仕事だと考えているからです。整理や下書きまではAIに手伝ってもらっても、「これで合っています」と言うのは、AIではなく人間です。

確認は、一つ一つ、インターネットで突き合わせます

確認の方法は、地道です。まとめてもらった内容を、一つ一つ見ていきます。そして、元の情報とインターネットで突き合わせて、間違っていないかを確かめます。

やってみて分かったのは、確認作業のほうが、資料を一から作るよりも早いということです。情報を集めて並べる作業はAIが担当してくれます。自分は「合っているかどうか」だけを見ればいい。ゼロから作る負担と比べると、ずっと楽でした。手作業でまとめていた頃より、時間ははっきり短くなりました。

ただし、確認は必須です。確認を省いてしまうと、AIを使うメリットよりも、間違いを出してしまうリスクのほうが大きくなります。早くなった分の時間は、確認に回す。それくらいの気持ちで、ちょうどいいと思っています。

これからAIで比較資料を作ってみる方には、確認するとき、次のところから見ることをおすすめします。

  • 数字:金額、期間、割合。桁や単位が違っていないか
  • 名前:サービス名、会社名。本当に存在するか、表記が合っているか
  • 日付と条件:いつ時点の情報か。例外や但し書きが抜けていないか

確認するときは、公式の情報を優先します。口コミやまとめサイトは、あくまで補助的な参考にとどめるのが安全です。

実在しないサービスが載っていたことがありました

最初にAIに全部作らせたとき、内容を確認していて驚いたことがあります。まとめられた内容の中に、実在しないサービスが載っていたのです。

どこから引用したのか、私には分かりませんでした。いくつかの情報が混ざって、それらしいものができてしまったのかもしれません。ただ、理由は分かりません。分かっているのは、確かにそういうことがあった、という事実だけです。

怖いのは、間違った部分が、正しい部分と同じ調子で書かれていることです。文章が自然で整っているので、読んでいるだけでは気づきにくいのです。私は一つ一つ確認していたので気づけました。もし確認せずにそのまま出していたら、存在しないサービスを、読者に紹介してしまうところでした。

AIが作った文章は、正しいところも間違っているところも、同じ自信のある口調で書かれます。だから、どこが怪しいのかを見分けるのは、読む側の仕事になります。確認は、人間が引き受けるしかないと考えています。こうしたことも重なって、AIに全部任せるのはやめて、今の補助的な使い方に変えました。

AIが増えても、最後の責任は人間にあります

以前、インサイドセールスの将来性について書いた記事で、AIから一番遠い仕事として、クロージングを挙げました(インサイドセールスに将来性はあるか。AIに置き換えられる人と、生き残る人の違い。)。買うかどうかの決断は、理屈だけでなく気持ちで動きます。押すタイミングや引くタイミングの判断は、データにしにくい部分です。

今回の確認作業も、同じ構造だと思っています。AIが得意なのは、集めた情報を整理して並べることです。一方で、その内容に責任を持って「これで合っています」と言えるのは、人間です。間違いが出たとき、責任を取るのはAIではなく、それを使った人です。

営業の世界では、この考え方はとても自然です。お客さまに伝えた内容に間違いがあれば、謝るのも、直すのも、営業本人です。「AIがそう言っていました」は、お客さまには通りません。道具が変わっても、伝えた内容の責任は自分にある。その前提は変わらないと思います。

仕事選びや転職でも、同じことが言えると思います

これは、転職活動でも当てはまる話だと思っています。

これからは、AIで職務経歴書や自己PRを整える人が増えていくでしょう。それ自体は、悪いことではありません。文章が苦手な人が、AIの助けを借りて読みやすい書類を作れるのは、いいことだと思います。

ただ、採用にも関わってきた営業管理職の目で見ると、気になるのは書類の綺麗さよりも、書かれた内容を本人が把握しているかどうかです。書かれている数字の根拠を聞かれたときに、自分の言葉で説明できるか。その数字が本当に合っているか、自分で確認しているか。ここは、書類をAIで整えた人でも、自分で書いた人でも、同じように問われるところです。

AIで整えたことを隠す必要はありません。大事なのは、出来上がったものを自分で確認して、責任を持って出せているかです。この姿勢は、営業でも、転職でも、変わらないと思います。

今日から試せる、3つのステップ

AIを補助として使いたい方に向けて、私がおすすめする流れをまとめます。

  1. 材料は、自分で集めます。公式ページなど、元の情報を自分で用意します。AIに「調べて」と任せるのではなく、何を材料にするかを人が決めます。
  2. AIには、整理だけ頼みます。「この資料をもとに、比較できる形に並べてください」のように、渡した情報の範囲で整理してもらいます。何を比べるか、どんな見方をするかは、人が決めて伝えます。
  3. 出てきた内容を、一つ一つ確認します。数字、名前、日付を、元の情報と突き合わせます。確認した日付を残しておくと、あとで見返したときに、いつ時点の情報か分かります。

料金や条件が変わりやすい商材ほど、この3つ目が大事になります。記事や資料には、確認した日を書いておく。読む人にも、その情報が変わる可能性があることを伝えておく。それだけで、資料を安心して使ってもらいやすくなります。

まとめ

AIは、資料づくりの手間を減らしてくれる、とても便利な道具です。私も、以前は人の手でまとめていた比較資料の作成に使って、楽になりました。一方で、全部作らせると営業目線とずれること、料金や条件が変わりやすい情報には弱いこと、実在しないものが混ざることがあることも、実際に体験しました。

だから私は、AIを補助として使っています。材料は自分で集める。整理はAIに頼む。そして、正確かどうかの確認は、人間がやる。確認作業は、資料をゼロから作るよりも早いので、手間は減りました。ただし、確認は必須です。

AIが当たり前になる時代でも、出したものに責任を持つのは人間です。その前提を忘れずに使えば、AIは頼れる相棒になってくれると思っています。

この記事を書いた人

営業ひとすじ20年。電話営業・インサイドセールスの現場から始まり、約70名の営業組織のマネジメントを経験。採用面接にも数百人単位で関わってきました。「辞めて正解だった人」も「辞めなくてよかった人」も見てきた立場から、テレアポ・インサイドセールス・営業職の次のキャリアについて、きれいごとではない話を書いています。

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