独立すると社会保険はどう変わるか。国民健康保険は全額自己負担になる、という話を営業20年の管理職が書く。

独立すると社会保険はどう変わるか。国民健康保険は全額自己負担になる、という話を営業20年の管理職が書く。 営業・テレアポからの転職

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私は今、上場企業の会社員を続けながら、副業でいくつかの個人事業を並行して動かしています。だから正直に言うと、私自身はまだ「完全に独立して、会社の健康保険から抜ける」という経験はしていません。給料から天引きされる保険料の金額を、毎月なんとなく眺めているだけの立場です。

ただ、営業として20年、約70名の組織をマネジメントしてくる中で、「そろそろ独立したい」「フリーランスでやっていけないか」という声は、周囲でよく耳にしてきました。そうした話でよく後回しにされがちなのが、社会保険の話です。給料・仕事内容・自由度は真剣に比較するのに、健康保険と年金がどう変わるかは「まあ何とかなるだろう」で済まされがちです。

この記事では、独立すると社会保険がどう変わるのか、そして令和8年度にその負担の上限がどう動いているのかを、なるべく専門用語を減らして整理します。数字は必ず出典を明記します。断言できない部分は、断言せずに書きます。

結論を先に書きます

独立して個人事業主・フリーランスになると、会社員時代に加入していた健康保険・厚生年金から外れ、原則として市区町村の国民健康保険と国民年金に加入することになります。一番変わるのは、これまで会社と折半していた保険料が、独立後は全額自分の負担になるという点です。金額そのものだけでなく、「誰が半分持ってくれていたか」が変わることが、独立後の負担感を大きくしています。

会社員の社会保険は、会社が半分持ってくれています

会社員が加入している健康保険(中小企業の多くは「協会けんぽ」)と厚生年金には、共通する仕組みがあります。保険料を会社と本人で半分ずつ負担する「労使折半」です。

協会けんぽの令和8年度の健康保険料率は、全国平均で9.90%です。前年度から0.10ポイント引き下げられました(出典:全国健康保険協会「令和8年度保険料率のお知らせ」)。この引き下げは、協会けんぽの前身にあたる政府管掌健康保険時代の1992年度以来、34年ぶりだと報じられています(出典:ファイナンシャルフィールド「令和8年度から協会けんぽが保険料率を引き下げ」)。都道府県ごとに料率は異なり、令和8年度は最も高い佐賀県で10.55%、最も低い新潟県で9.21%という差があります(出典:全国健康保険協会「都道府県毎の保険料率」)。この料率を会社と本人で折半するので、本人負担はおおよそ半分の水準です。40歳から64歳までは、これに加えて介護保険料率がかかります。こちらは全国一律1.62%で、令和7年度の1.59%から引き上げられています。

厚生年金の保険料率は18.3%で固定されています。平成29年9月の引き上げを最後に、それ以降は変わっていません(出典:日本年金機構「厚生年金保険の保険料」)。これも会社と本人で半分ずつ、つまり本人負担は9.15%です。給料が上がれば保険料も上がりますが、その分だけ会社が同じ額を上乗せして負担してくれている、という構造になっています。

会社員のうちは、この「会社が半分持ってくれている」という前提が当たり前すぎて、意識する機会がほとんどありません。独立して初めて、この前提がなくなることに気づく人が多いです。

独立すると入るのは、国民健康保険と国民年金です

独立すると、会社の健康保険の資格を失い、原則として住んでいる市区町村の国民健康保険に加入します。年金も、厚生年金から国民年金に切り替わります。

国民健康保険は、会社員の健康保険とは計算のしくみがまったく違います。厚生労働省によると、国民健康保険料(税)は世帯単位で算定し、世帯の被保険者ごとに応益分・応能分の各種類を計算して合計する仕組みで、具体的な算定方法は各市区町村の条例で定められています(出典:厚生労働省「国民健康保険の保険料・保険税について」)。多くの自治体では、前年の所得に応じてかかる「所得割」と、加入者の人数に応じてかかる「均等割」を組み合わせて計算しており、自治体によってはさらに世帯単位でかかる「平等割」を加える3方式のところもあります。料率や金額は自治体ごとに違うため、「独立したらいくらになるか」は、正確には自分が住む市区町村に確認するしかありません。

年金のほうは、国民年金保険料が全国一律の定額制です。令和8年度は月額17,920円です(出典:日本年金機構「国民年金保険料」)。厚生年金のように給料に応じて増減するのではなく、収入の多い少ないにかかわらず定額を払う仕組みです。そしてこれも、会社員時代のように会社が半分持ってくれることはなく、全額自分で払います。

会社員と独立後、何がどう変わるか整理します

項目 会社員(協会けんぽ・厚生年金) 独立後(国民健康保険・国民年金)
医療保険の負担 会社と本人で折半(全国平均9.90%を二等分) 全額自己負担(所得割+均等割等で自治体ごとに算定)
年金の負担 会社と本人で折半(18.3%を二等分) 全額自己負担(定額・令和8年度は月17,920円)
保険料の決まり方 標準報酬月額に料率をかけた金額 前年の所得等をもとに市区町村が算定
手続き 会社の総務・人事が手続き 自分で市区町村・年金事務所に手続き
将来の年金 国民年金+厚生年金の二階建て 国民年金のみ(上乗せは任意加入の制度で自分で用意)

表にすると分かりやすいのですが、負担が増えるだけでなく、「会社が代わりにやってくれていた手続きを、全部自分でやる」ことになる点も見落とされがちです。忙しい独立初期に、この事務作業の負担が地味にのしかかってきます。

独立1年目が、一番重く感じやすい理由

国民健康保険は、前年(1月から12月まで)の所得をもとに保険料が計算されます。つまり、独立した年に収入が下がったとしても、保険料の計算に使われるのは会社員時代の給与所得です。独立した直後の1年目がもっとも保険料が高くなりやすいのはこのためで、実際に自治体の公式な解説でも、退職直後の加入は在職中の所得額から保険料が算定されるため、所得額によっては高額になる場合があると説明されています(出典:河内長野市「退職後の国民健康保険料(任意継続との比較)」)。

「独立して収入が減ったのに、保険料は前の給料基準で高いまま」という状態が、最初の1年は起きやすいということです。ここを知らずに独立すると、想定していたより手元に残るお金が少なく、「思っていたのと違う」と感じる人が出てきます。独立を考えるなら、退職前の年収を基準にした国民健康保険料の見込み額を、住んでいる市区町村の窓口やシミュレーションで一度確認しておくことをおすすめします。

実は、国民健康保険を選ばない道もあります

会社を辞めたら自動的に国民健康保険しか選べない、と思っている人もいますが、条件を満たせば「任意継続被保険者制度」を使って、それまで加入していた協会けんぽに引き続き最大2年間加入することができます。資格を失う前日までに継続して2か月以上被保険者だったことなどの条件があり、資格喪失日(退職日の翌日など)から20日以内に申し出る必要があります(出典:全国健康保険協会「任意継続の加入条件について」同「加入期間について」)。

ただし、任意継続の保険料はそれまで会社が負担してくれていた分も含めて全額自己負担になるため、目安としては在職中の保険料のおおむね2倍程度になるとされています(上限あり。出典:全国健康保険協会「任意継続の保険料について」)。国民健康保険と任意継続、どちらが安くなるかは所得や自治体によって変わるので、独立を決める前に両方の見込み額を比べておくと、余計な出費を避けやすくなります。

家族がいる場合、扶養という選択肢もあります

もう一つ、見落とされがちな選択肢があります。独立後の所得の水準によっては、配偶者や家族が会社員として加入している健康保険の「被扶養者」に入れる場合があるということです。被扶養者になれば、自分自身の国民健康保険料や国民年金保険料の負担を避けられる可能性があります。ただし、被扶養者として認定されるには年間の収入見込みなど一定の条件があり、条件は加入している健康保険組合や協会けんぽの支部によって細かな運用が異なります。独立後すぐに軌道に乗るか分からない時期は特に、家族の扶養に入れるかどうかを最初に確認しておく価値があります。詳しい認定基準は、配偶者が加入している健康保険の担当窓口に直接確認するのが確実です。

節税の工夫が、翌年の保険料にも響きます

国民健康保険の所得割は、収入そのものではなく、必要経費や各種控除を差し引いたあとの「所得」をもとに計算されます。つまり、青色申告特別控除など個人事業主が使える節税の工夫は、所得税や住民税だけでなく、翌年度の国民健康保険料にも影響してくる可能性があるということです。独立後は、確定申告の内容がそのまま次の年の保険料の重さにつながっていく、という感覚を持っておくと、単なる節税以上の意味を持ちます。複数の個人事業を並行して動かしている身としても、帳簿や経費の整理を後回しにすると、あとで自分の首を絞めることになりかねないとよく言われます。独立するなら、事業の中身と同じくらい、この事務的な部分も早いうちに仕組み化しておくことをおすすめします。

独立にまつわる、よくある疑問

Q. 国民健康保険料は、いつ・どうやって知らされるのですか。
独立して市区町村に国民健康保険の加入手続きをすると、その年度の保険料が計算され、納付書や口座振替の案内が送られてきます。年度の途中で加入した場合は、加入した月からの月割りで計算されるのが一般的です。正確な通知時期や納付方法は自治体ごとに違うため、加入手続きの際に窓口で確認しておくと安心です。

Q. 保険料が払えないときは、どうすればいいですか。
所得が大きく下がった場合などに、保険料の減免や分割納付の相談に応じてもらえる制度が用意されている自治体が多くあります。放置して滞納すると延滞金がかかったり、保険証の扱いに影響が出たりすることがあるため、払えないと分かった時点で、早めに市区町村の国民健康保険の窓口に相談することが大切です。

Q. 独立する前に、何を準備しておけばいいですか。
最低限、次の3つを独立前に数字で出しておくことをおすすめします。1つ目は、今の年収をもとにした国民健康保険料の見込み額。2つ目は、任意継続被保険者制度を使った場合の見込み額。3つ目は、家族の扶養に入れる可能性があるかどうかです。この3つを比べるだけで、独立後の資金計画の解像度がかなり上がります。

そして、国保の負担上限そのものが上がっています

ここまでは「個人の負担がどう変わるか」の話でしたが、制度そのものも動いています。厚生労働省は、国民健康保険の保険料にかかる賦課限度額(1世帯あたりの保険料の上限額)を、令和8年度に引き上げました。官報に公布された改正政令(令和8年政令第2号)によると、基礎賦課額の上限が66万円から67万円に、そこに後期高齢者支援金等賦課額26万円・介護納付金賦課額17万円を合わせた小計が110万円になります。さらに令和8年度からは新たに「子ども・子育て支援納付金」にあたる賦課額(上限3万円)が加わり、4区分合計の上限は113万円になりました(出典:社会保険労務士PSRネットワーク「令和8年度の後期高齢者医療制度の保険料の賦課限度額などを盛り込んだ改正政令を公布」)。

75歳以上が加入する後期高齢者医療制度でも、同じ令和8年度に賦課限度額が80万円から87万1千円に引き上げられています。これは今すぐ独立を考えている現役世代に直接関係する数字ではありませんが、医療保険制度全体で、上限そのものが上がる方向に動いているという流れを示す一つの材料にはなります。

上限額が上がるのは、主に高所得者層に影響する話であり、独立直後で収入が不安定な人がいきなりこの上限に達するわけではありません。ただ、「独立して事業がうまくいって所得が増えたときに、会社員時代よりも保険料の伸び方が大きくなりうる」という制度の方向性としては、知っておいて損はないと思います。

今回の引き上げの背景には、令和8年4月から始まる「子ども・子育て支援金制度」があります。少子化対策の財源を、現役世代だけでなく医療保険制度全体で広く負担し合う仕組みとして新設されたもので、国民健康保険にも後期高齢者医療制度にも、この「子ども・子育て支援納付金」にあたる区分が新たに加わりました。会社員が加入する協会けんぽの保険料にも、同じ趣旨の支援金率(0.23%)が上乗せされています(出典:全国健康保険協会「令和8年度保険料率のお知らせ」)。つまり、会社員であっても独立していても、社会全体で保険料の負担が少しずつ重くなる方向に動いているのは同じです。独立するかどうかを迷うとき、保険料の差だけを理由に判断するのではなく、こうした制度全体の動きも踏まえて、長い目で資金計画を立てておくほうが現実的だと思います。

数字を知った上でなら、独立は怖くない

ここまで、独立すると社会保険の負担がどう変わるかを書いてきましたが、これは独立にブレーキをかけるための記事ではありません。私自身、やったことがないからという理由だけで避けるのはもったいないと思っていますし、副業をいくつも並行してやってみて、初めて分かることのほうが多いと実感しています。

ただ、知らずに飛び込むのと、知った上で飛び込むのとでは、独立後の心の余裕がまったく違います。「思っていたより保険料が高い」という理由だけで、事業そのものは悪くないのに焦って判断を誤る、というのはもったいない話です。独立を決める前に、今の年収をもとにした国民健康保険料の見込み額と、任意継続を使った場合の見込み額を、両方とも具体的な数字で出しておく。それだけで、独立後の資金計画はかなり現実的なものになります。

まとめ

  • 独立すると、会社員時代の健康保険・厚生年金から、国民健康保険・国民年金に切り替わります
  • 一番の変化は、会社と折半していた保険料が全額自己負担になることです
  • 国民健康保険は前年所得で計算されるため、独立1年目が一番重く感じやすいという特徴があります
  • 会社の健康保険を最大2年間続けられる「任意継続被保険者制度」という選択肢もあります
  • 国民健康保険の保険料の上限(賦課限度額)は令和8年度に109万円から113万円に引き上げられており、制度全体として負担の上限が上がる方向に動いています
  • 数字を知った上で判断すれば、独立は必要以上に怖がるものではありません

もし「独立か、それとも今の営業経験を活かして次の会社を探すか」で迷っているなら、両方の選択肢を数字で比べてみることをおすすめします。一人で「このままでいいのか」と抱えて時間だけが過ぎるより、一度きちんと話して整理したほうが、次の一歩は早く見つかります。UZUZは第二新卒に特化していて、ブラック企業を避けた求人から紹介してくれます。登録は無料で、数分で終わります。合わなければ断ってかまいません。迷っているなら、選択肢の一つとして知っておくだけでも損はありません。

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この記事を書いた人

営業ひとすじ20年。電話営業・インサイドセールスの現場から始まり、約70名の営業組織のマネジメントを経験。採用面接にも数百人単位で関わってきました。「辞めて正解だった人」も「辞めなくてよかった人」も見てきた立場から、テレアポ・インサイドセールス・営業職の次のキャリアについて、きれいごとではない話を書いています。

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