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同じように詰められても、その後の道は人によってはっきり分かれます。歯を食いしばって残る人。もう限界だと辞めていく人。私は営業の現場に20年いて、約70名の営業組織をマネジメントしてきました。詰められたあとの分かれ道を、何百人分も見てきました。
ただ、この分かれ道を「残る人=強い」「辞める人=弱い」の二択で語ると、大事なところを見落とします。残る理由にも辞める理由にも、実はいくつかの種類があります。この記事では、その中身を採用・育成の現場目線で書いていきます。
「残る人」は一枚岩ではありません
詰められても組織に残る人を、私はだいたい3つのタイプに分けて見てきました。同じ「残る」でも、中身はまったく別物です。
タイプ①:何くそ根性で残る人
一番わかりやすいタイプです。悔しさをそのままエネルギーに変えて、次の行動を変えてくる。詰められたことをきっかけに数字の分解を始め、翌週には何かしら結果に変化が出る。このタイプは伸びます。ただし、これは詰められたから伸びたのではなく、もともと考える力を持っていた人が、悔しさをきっかけに動き出しただけだと私は思っています。詰めが機能したように見えて、実際は本人の地力です。
タイプ②:辞める勇気がなくて残っているだけの人
ここが見落とされがちなところです。残っている=根性がある、ではありません。転職活動をする気力がない、次が見つかる自信がない、今の生活を変える決断ができない。理由はいろいろですが、共通しているのは「積極的に残っている」のではなく「動けずに残っている」という状態です。
このタイプは、外から見ると①と見分けがつきにくいのですが、中身は正反対です。数字は改善しないまま、ただ耐える日々が続きます。本人にとっても、実は一番しんどい残り方だと思います。
タイプ③:面倒くささが原動力になって残る人
これは私が現場で何度も見てきた、少し意外なパターンです。「また一から人間関係を作り直すのが面倒くさい」という、一見後ろ向きな理由が、逆に前向きなエネルギーに転換される人がいます。
「どうせ今の関係を続けるなら、いっそ結果を出して見返してやろう」「この上司の上に、追い越して立ってやろう」。動機の出発点は意地悪く見えるかもしれませんが、これは立派な原動力です。人が本気になるきっかけは、必ずしも綺麗な理由である必要はありません。むしろ「面倒だから今の場所で結果を出す」という現実的な判断ができる人は、私の実感としては仕事ができる人が多いです。
タイプ①と③の違いは、動機が「悔しさ」か「合理的な打算」かという点だけで、行動の質としてはどちらも本物です。見分けるポイントは、実際に行動が変わっているかどうかです。
「辞める人」も、実は一様ではありません
辞める人についても、私は大きく2つのパターンがあると思っています。
パターンA:素直に限界まで消耗して辞める人
これは想像しやすいと思います。数字を厳しく問われ続け、改善の打ち手も与えられないまま、心身がすり減って辞めていく。こうしたケースは、本人の問題というより、環境側の問題であることが多いです。厚生労働省は職場のパワーハラスメントを6つの類型で示していますが(出典:厚生労働省「あかるい職場応援団」)、過大な要求や精神的な攻撃が繰り返される職場であれば、辞めるという判断はまっとうです。
パターンB:指導を「詰められた」と受け取って辞める人
ここからは、正直に書くと少し勇気がいる話です。私が現場で見てきた範囲では、実際にはそこまで厳しい言い方をしていないのに、本人が強い攻撃として受け取ってしまうケースが増えてきた実感があります。
「今月の提案数、先月より減っているけど何が原因だと思う?」という、確認に近いやり取りでも、真っ青な顔で受け止めてしまう。上司としては進捗を確認しているだけのつもりでも、本人の中では「詰められた」体験として処理されてしまう。
これは本人が悪いという話ではありません。私は、育ってきた環境における対人コミュニケーションの経験量が影響しているのではないかと考えています。特に、学生時代にオンライン授業が中心だった世代は、対面での摩擦を伴うやり取り、たとえば先生に注意される、友人と意見がぶつかる、といった経験の総量が、以前の世代より少ない可能性があります。それ自体は誰のせいでもない、時代の巡り合わせです。ただ、その経験量の差は、社会に出て最初に受ける「確認」や「指摘」を、実際より強い攻撃として受け取りやすくする一因になり得ると、私は現場で感じています。
ここは一つの見方であって、断定できる話ではありません。同じ世代でも人によって差は大きいですし、経験量だけがすべてを決めるわけでもありません。それでも、こうした背景の違いがあるかもしれないと知っておくことは、辞める側にとっても、育てる側にとっても、無駄ではないと思っています。
この記事で伝えたいこと
もしあなたが「自分は打たれ弱いのかもしれない」と落ち込んでいるなら、まず知ってほしいのは、詰められたと感じたことそのものは、あなたの弱さの証明ではないということです。受け取り方には、育ってきた環境や経験の差が関係します。それは責められるべきことではありません。
その上で、一つだけ確認してほしいことがあります。実際に自分が置かれているのは「詰め」なのか、それとも「指導」なのか。ここを切り分けずに辞める判断をすると、次の職場でも同じことが起きます。
- 未達の話が、数字の分解になっているか。「提案数」「決定率」まで具体的に下りているなら指導です
- 人格そのものを否定する言葉が使われていないか。「使えない」「向いてない」は指導の範囲を超えます
- その厳しさが、あなただけに繰り返し向けられているものか、業務として普通に交わされているやり取りか
これが「詰め」であれば、辞める判断は正当です。これが「指導」であれば、辞める前に一度、自分の受け取り方の癖を疑ってみる価値があります。どちらであっても、それを見分けるための情報を持っておくことが、後悔しない選択につながります。
自分がどのタイプに近いか、確認してみてください
頭で分かっていても、渦中にいると自分を客観的に見るのは難しいものです。今の自分に近いものを、正直にチェックしてみてください。
- 詰められた翌週、具体的に行動を変えられているか。それとも同じことを繰り返しているか
- 今の職場を辞めたいと思いながら、実際に情報収集や行動を起こせずに月日だけが過ぎていないか
- 「悔しいから」「面倒だから」のどちらでもいいので、今の場所で結果を出そうという気持ちが少しでも残っているか
- 言われた言葉を思い出したとき、内容そのものより「言われ方」への引っかかりの方が強く残っていないか
- 同じ言葉を、信頼できる同僚が言われていたら、自分と同じくらい強く受け止めると思うか
最後の2つに強く当てはまる人は、パターンBに近い可能性があります。それは弱さではありませんが、次の職場でも同じことが起きないよう、受け取り方の癖には自覚的になっておいた方がいいと思います。1つ目と3つ目に当てはまる人は、タイプ①か③に近く、今の場所でもう少し粘る余地があるかもしれません。2つ目だけが強く当てはまる人は、タイプ②です。ここが一番危険なところで、動けないまま時間だけが過ぎていくと、消耗はじわじわ蓄積していきます。動く気力が湧かないなら、まずは話を聞いてもらうところから始めるのも一つの手です。
管理職側に、一つだけ言っておきたいこと
ここまで読んでくれた管理職の方もいると思うので、一つだけ書かせてください。相手がどう受け取るかわからない以上、伝え方の解像度を上げるのは、上司側の仕事です。「これくらい大丈夫だろう」という自分の感覚を、そのまま部下に当てはめないこと。確認のつもりで発した一言が、相手にとって全く違う重さで届いている可能性を、常に頭の片隅に置いておくべきだと思います。これは甘やかしではありません。伝わらない指導は、指導として機能していないというだけの話です。
まとめ
- 詰められた後「残る人」は一枚岩ではない。何くそ根性型、辞める勇気がなく残っているだけの型、面倒くささを原動力にする型の3つがある
- 「辞める人」も一様ではない。純粋に限界で辞める人と、指導を詰めと受け取って辞める人がいる
- 指導を強く受け取ってしまう背景には、育った環境での対人経験の量が関係している可能性がある。これは本人の弱さではない
- 大事なのは、今いる場所が「詰め」なのか「指導」なのかを、自分で見分けられるようになること
最後にもう一つ。この記事は、どちらのタイプが正解だと決めつけるものではありません。残るにしても辞めるにしても、自分がどのタイプに近いかを知った上で選んだ結果なら、それは納得できる選択になるはずです。
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この記事を書いた人
営業ひとすじ20年。電話営業・インサイドセールスの現場から始まり、約70名の営業組織のマネジメントを経験。採用面接にも数百人単位で関わってきました。「辞めて正解だった人」も「辞めなくてよかった人」も見てきた立場から、テレアポ・インサイドセールス・営業職の次のキャリアについて、きれいごとではない話を書いています。


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