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前回、退職代行を使われた側の管理職として、辞めていく人の話を書きました。あの記事で何人かの方から「辞めた後、何をすればいいのかが分からなくて不安だった」という感想をいただきました。今回はその続きです。退職代行を使って辞めた人も、自分の口できちんと伝えて円満に辞めた人も、実は辞めた後にやることはほとんど同じです。
私は営業ひとすじ20年、約70名の営業組織をマネジメントしてきました。管理職として、辞めていく部下に「保険とか年金とか、次どうするか決まってる?」と聞いたことが何度もあります。ほとんどの人が「まだ何も」と答えました。責めているわけではありません。会社にいる間は、そういう手続きをすべて総務が代わりにやってくれていたので、自分で調べる必要がなかっただけです。辞めた瞬間から、それを自分でやる番になる。この記事では、その中身を順番に整理します。
目次
- 会社が代わりにやってくれていたこと
- 全体像:期限が早い順に4つ
- ①健康保険:3つの選択肢
- ②年金:14日以内に、市区町村役場で
- ③雇用保険(失業給付):ここが一番複雑です
- 退職代行を使った場合、離職票はどうなるか
- ④住民税:何もしなくていい場合がほとんどです
- よくある質問
- まとめ
会社が代わりにやってくれていたこと
以前の記事で「独立すると社会保険がどう変わるか」を書いたとき、会社員のうちは保険料を会社と折半していることすら意識しないものだ、という話をしました。実はお金の話だけでなく、手続きそのものも同じです。入社したときの社会保険の加入も、毎年の年末調整も、すべて総務・人事が裏側でやってくれています。本人が窓口に行くことは、ほぼありません。
退職すると、この「代わりにやってくれる人」がいなくなります。しかも、多くの会社では、退職者への説明はかなりあっさりしています。私自身、管理職として何人もの退職者を見送ってきましたが、正直に言うと、辞めていく人への事務手続きの説明は、総務側もどこか事務的で、必要最低限になりがちです。冷たいというより、辞める人ごとに丁寧な説明会を開く余力が、多くの会社の総務にはないというのが実情だと思います。だからこそ、自分で最低限の流れを知っておく価値があります。
全体像:期限が早い順に4つ
退職後にやることは、大きく4つです。期限が早い順に並べます。
| 手続き | 期限の目安 | 窓口 |
|---|---|---|
| ①健康保険 | 任意継続なら20日以内 | 協会けんぽ/市区町村 |
| ②年金 | 14日以内 | 市区町村役場 |
| ③雇用保険(失業給付) | 離職票到着後、なるべく早く | ハローワーク |
| ④住民税 | 基本は会社側の手続きのみ | 特になし(納付書を待つ) |
この記事では、それぞれの中身を順番に説明します。①の健康保険は、以前の記事で国民健康保険・任意継続の違いを詳しく書いているので、ここでは要点だけに絞り、詳しくはそちらに譲ります。今回は②と③、特に③の雇用保険(失業給付)を厚めに書きます。ここが一番複雑で、かつ一番お金に直結する部分だからです。
一つだけ、先に断っておきたいことがあります。この記事は「代わりに手続きをします」というサービスの案内ではありません。あくまで、どんな手続きが、いつまでに、どこで必要になるかを整理したものです。実際の申請や届出は、必ずご自身で窓口に行っていただく必要があります。会社が代わりにやってくれていたことを、自分の足で一つずつ進めていく。そのための地図だと思ってください。
①健康保険:3つの選択肢
健康保険は、大きく3つから選びます。
- 国民健康保険:市区町村が運営する保険に切り替える。全額自己負担で、前年の所得をもとに計算されます
- 任意継続被保険者制度:それまで加入していた協会けんぽに、最大2年間そのまま加入し続けられる制度。資格喪失日から20日以内の申し出が必要です
- 家族の扶養に入る:配偶者などが加入している健康保険の被扶養者になれる場合があります
どれが一番お得かは、所得や家族構成によって変わります。この3つの比較・計算の考え方は、以前の記事「独立すると社会保険はどう変わるか」で詳しく書いていますので、そちらをご覧ください。今回はここを深掘りせず、次の年金・雇用保険に進みます。
②年金:14日以内に、市区町村役場で
会社員のうちは厚生年金(国民年金の第2号被保険者)に加入していますが、退職すると原則として国民年金の第1号被保険者に切り替わります。日本年金機構の公式ページによると、この手続きは退職日の翌日から14日以内に、住所地の市区役所または町村役場で行う必要があります(出典:日本年金機構「国民年金に加入するための手続き」)。
必要なものは、国民年金被保険者関係届書と、基礎年金番号が分かる書類(基礎年金番号通知書やマイナンバーカードなど)です。退職直後の手続きでは、資格喪失日を証明する書類(離職票など)が必要になる場合もあります。提出は本人のほか、世帯主が代わりに行うこともできます。
この14日という期限、正直に言うと、退職直後のバタバタで見落としやすい部類だと思います。次の転職先が決まっていて、同じ月のうちに厚生年金に再加入する場合は、この切り替え手続きが不要になるケースもあります。ただ、次が決まっていない、または月をまたぐ場合は、期限を過ぎると「未納」の扱いになってしまうので、退職したらまず先にこれだけは済ませておく、というくらいの優先度で考えておくと安心です。
③雇用保険(失業給付):ここが一番複雑です
ここからが本題です。失業給付(基本手当)は、退職後の生活に直結するお金の話なのに、仕組みが複雑で、正確に理解できていない人が多い印象があります。順を追って説明します。
まず、受け取るための条件があります。ハローワークインターネットサービスによると、基本手当を受けるには、離職の日以前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12か月以上あることが必要です(会社都合退職などにあたる「特定受給資格者」等は、離職の日以前1年間に6か月以上でも対象になります。出典:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」)。
次に、離職票を受け取ります。離職票は会社が発行する書類で、これがないとハローワークでの手続きが始められません。離職票を持ってハローワークに行き、求職の申込みをすることで、初めて手続きが動き出します。
そこから、7日間の待期期間があります。厚生労働省によると、自己都合で離職した場合、受給手続日から7日経過した日の翌日から一定期間が経過するまで、基本手当を受給できないとされています(出典:厚生労働省「制度変更(令和7年4月)」)。この7日間の待期そのものは、自己都合・会社都合を問わず共通する仕組みです。
ここから先が、自己都合か会社都合かで分かれます。会社都合退職(特定受給資格者等)の場合は、7日間の待期が終われば、比較的早い段階で給付が始まります。一方、自己都合退職の場合は、7日間の待期の後にさらに「給付制限期間」が設けられます。厚生労働省の同ページによると、この給付制限期間は令和7年(2025年)4月から、原則2か月から1か月に短縮されました(出典:同上)。なお、過去5年間に複数回自己都合で退職している場合は給付制限が3か月になる例外がある、と複数の社会保険労務士事務所の解説記事で説明されています。この例外規定の2025年4月以降の扱いについては、今回、厚生労働省の一次資料までは確認できていないため、該当しそうな方はハローワークの窓口で直接確認することをおすすめします。
受け取れる日数(所定給付日数)は、年齢・被保険者期間・離職理由によって90日から360日の間で決まります。受給できる期間は、原則として離職した日の翌日から1年間です。1年を過ぎると、たとえ所定給付日数が残っていても受け取れなくなるので、退職後は早めに手続きを始めることをおすすめします(出典:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」)。
管理職として横で見ていた実感を言うと、「自己都合だから、しばらくお金が入らないのは仕方ない」と最初から諦めている人が多かったです。ですが、退職理由によっては会社都合に近い扱いになるケースもありますし、給付制限自体も年々短縮される方向で見直されています。自分の場合がどちらに当たるのか、思い込みで判断せず、ハローワークの窓口で確認する価値はあると思います。
大まかな流れを、時系列で並べ直すとこうなります。
- 退職日
- 離職票が届く(一般的には2週間前後、遅れる場合もある)
- ハローワークで求職の申込み+離職票の提出
- 受給資格の決定
- 7日間の待期期間(全員共通・この間は誰も受け取れない)
- 雇用保険受給者初回説明会(待期終了から1〜2週間後に案内されることが多い)
- (自己都合の場合のみ)給付制限期間
- 失業の認定日ごとに、基本手当が振り込まれる
こうして並べてみると分かるのですが、離職票が届くタイミングそのものが、そもそも人によってばらつきます。退職代行を使った場合も、通常の退職の場合も、ここは変わりません。「早く手元にお金が欲しいのに、まだ離職票すら届かない」という時期が、誰にでも一定期間はあるということです。ここで慌てて何度も会社に催促の連絡を入れるより、まずは目安の期間(2週間〜1か月程度)を知った上で、静かに待つほうが精神的には楽だと思います。
退職代行を使った場合、離職票はどうなるか
前回の記事のテーマにも関わる部分です。「退職代行を使うと、離職票などの書類がもらえないのでは」と心配する声を聞くことがありますが、雇用保険法施行規則第7条により、事業主は退職者が希望した場合、離職証明書をハローワークへ提出し、離職票の交付を受けさせる義務があります。退職代行を使ったことを理由に、この手続きを拒否できる根拠はありません(出典:厚生労働省法令等データベース「雇用保険法施行規則」、条文の解釈については複数の法律事務所・社会保険労務士事務所の解説記事も参照)。
離職票は、会社からハローワークへ、ハローワークから会社へ、会社から本人へという経路をたどって届くため、退職日から2週間前後かかるのが一般的とされています。状況によっては1か月近くかかることもあるようです。もし退職から1か月以上経っても届かない場合は、管轄のハローワークに相談すれば、会社に発行を促してもらえたり、状況によっては再発行の手続きに進めたりする道があります。焦らず、まずはハローワークに相談してみてください。
もし、まだ退職代行を使うかどうか自体を迷っている段階なら、前回の記事でも書いたとおり、運営元によって法的にできることが違う点だけは押さえておいてください。弁護士資格のない民間業者は、有給消化や退職日の調整といった「交渉」ができませんが、労働組合が運営する退職代行なら、団体交渉権にもとづいて会社と交渉できます。離職票の発行状況について会社に確認してもらうことも、労働組合運営型であれば依頼の範囲に含められることが多いです。
女性の方(女性専門の退職代行):
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LINE・メールだけで相談を始めたい方(弁護士監修・労働組合連携):
④住民税:何もしなくていい場合がほとんどです
住民税は、在職中は毎月の給与から天引き(特別徴収)されていますが、退職するとこの仕組みが使えなくなります。6月から12月に退職した場合、会社が「給与所得者異動届出書」を市区町村に提出する義務があり(提出期限は異動した月の翌月10日、と多くの自治体の案内ページで案内されています)、それをもとに市区町村が納付書を作成し、自宅に郵送してくれます。本人が何か手続きをする必要は、基本的にありません。届いた納付書で、年4回に分けて(またはまとめて一括で)納めるだけです(出典:大阪市「退職・転勤などがあった場合(給与所得者異動届出書の提出)」ほか、複数の自治体公式ページで同様の案内を確認)。
1月から5月に退職した場合は、残りの住民税が最後の給与や退職金からまとめて天引きされる(一括徴収される)のが原則なので、これも基本的に自分で動く必要はありません。どちらのパターンでも、退職前に総務へ「普通徴収でお願いします」と一言伝えておくと、手続きがスムーズです。
よくある質問
Q. どれから手をつければいいですか。
期限で言えば、年金の切り替え(14日以内)が一番早く来ます。ただ、実際に一番お金に直結するのは雇用保険の失業給付なので、離職票が届いたら、年金の手続きと並行して、すぐハローワークにも足を運ぶのがおすすめです。健康保険は少し余裕がありますが、任意継続を選ぶ場合は20日以内という期限があるので、選択肢を先に決めておいたほうが安全です。
Q. すべて自分でやらないといけないのですか。
はい、基本的にはそうです。この記事は、あくまで「どんな手続きが、いつまでに、どこで必要か」を整理したものであり、手続きそのものを代わりに行うものではありません。実際の申請・届出は、ご自身で市区町村役場・年金事務所・ハローワークの窓口にて行ってください。
Q. 転職先がすぐ決まっている場合も、同じですか。
転職先が同じ月のうちに決まっていて、そこですぐ厚生年金・健康保険に再加入する場合は、年金や健康保険の切り替え手続きが不要になるケースがあります。ただし、月をまたぐ場合や、転職までに間が空く場合は、この記事の内容がそのまま当てはまります。
Q. 手続きをしないと、どうなりますか。
年金は、14日以内に手続きをしないと未納の扱いになります。将来受け取れる年金額に影響する可能性があるので、忙しくても後回しにしないほうがいい手続きです。健康保険も、無保険の期間ができてしまうと、その間の医療費が全額自己負担になるリスクがあります。
Q. 退職代行を使った場合、失業給付の手続きは何か変わりますか。
基本的な流れは変わりません。離職票を受け取り、ハローワークに持って行くという手順は同じです。違うのは、退職の経緯を会社の人と直接やり取りできない分、離職票がいつ届くかの見通しを、自分から会社に確認しづらいという点くらいです。前回の記事でも書きましたが、労働組合が運営する退職代行であれば、書類の発行状況についても代行業者を通じて確認できることが多いので、依頼する段階で聞いておくと安心です。
Q. 傷病などで、すぐに働ける状態でない場合はどうなりますか。
基本手当は「働く意思と能力があるのに就職できない状態」が前提のため、すぐに働けない場合は原則として対象になりません。ただし、その場合は受給期間の延長を申請できる制度があります。ご自身の状況に当てはまるかどうかは、ハローワークの窓口で個別に相談することをおすすめします。
まとめ
- 退職後にやることは、大きく①健康保険②年金③雇用保険(失業給付)④住民税の4つです
- 年金の切り替えは、退職日の翌日から14日以内に市区町村役場で行います
- 失業給付は、7日間の待期期間の後、自己都合なら給付制限(2025年4月以降は原則1か月)があります
- 退職代行を使っても、離職票は法律上必ず発行されます。届かない場合はハローワークに相談してください
- 住民税は、多くの場合、本人が特別に動く必要はありません
会社にいる間は、これらすべてを総務が裏側でやってくれています。それに気づくのは、たいてい辞めた後です。知らずに期限を過ぎてしまうより、辞める前、あるいは辞めた直後に、この4つだけでも頭に入れておくと、退職後の数週間がずいぶん落ち着いて過ごせると思います。
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