退職代行を使われた側の管理職が、本当に思っていたこと。

退職代行を使われた側の管理職が、本当に思っていたこと。 営業・テレアポからの転職

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ある日の職場に、一本の電話がかかってきました。「〇〇さんはいらっしゃいますか」。いますけど、と答えると、相手はこう続けました。「本日この瞬間から、ご本人へは一切コンタクトを取らないでください。退職代行を通じて、ご連絡しています」。

私は営業ひとすじ20年、約70名の営業組織をマネジメントしてきました。その中で、退職代行を「使われた側」になった経験があります。この記事は、退職代行を使おうか迷っている人が一番気にしているであろうこと、つまり「上司や会社は、どう思うのか」に、使われた側の本人として答えるものです。結論を先に言うと、心配しているようなことは、ほとんど起きません。

電話一本で、本当に終わります

退職代行の連絡は、拍子抜けするほど事務的です。本人の名前の確認、今後一切連絡を取らないでほしいという通告、以後の手続きの案内。それで終わりです。ドラマのような修羅場は起きません。起きようがないのです。こちらは本人と話すことすら、もうできないのですから。

受けた側の私が最初に感じたのは、怒りではありませんでした。「え、なんで?」です。昨日まで一緒に働いていた部下が、今日から接触禁止になる。この落差に、頭がついていかない。それが正直なところでした。

電話を切った後も、しばらく手が止まりました。前日の様子を思い返します。特に変わったところはなかった、いや、あったのか。自分は何か見落としていたのか。そういう反芻が、ぐるぐると続きます。ただ、それを確かめる手段は、もうどこにもありません。本人に電話をかけることも、メッセージを送ることも、してはいけない。この「何もできなさ」が、使われた側の一番の実感です。

使われた側の本音。怒りより「聞けない」もどかしさ

あのとき一番強く残ったのは、理由を聞けないことへのもどかしさでした。なんで辞めたのか。何が嫌だったのか。こちらに悪いところがあったなら、改善したい。次のメンバーのためにも知りたい。でも、聞けません。「辞めた理由を聞いてもいいですか」と質問すること自体ができない。コンタクトそのものが遮断されているからです。

これは、使う側からすれば、まさに期待どおりの効果だと思います。引き止められない。問い詰められない。気まずい面談も、送別の挨拶もない。辞める側を守る仕組みとして、退職代行は確実に機能していました。使われた側として、それは認めるしかありません。

そして、時間が経ったいま振り返っても、その部下を恨む気持ちはありません。残念さと、もどかしさと、少しの寂しさ。あるのはそれだけです。「裏切られた」という感覚とは違いました。そこまで追い詰められていたのか、それに気づけなかったか、というほうが近い。使われた側の感情は、世間で想像されているより、ずっと静かです。

あなたが去った後、職場では何が起きるか

使う側が一番想像できないのは、「自分が消えた後の職場」だと思います。実際に対応した側として、何が起きるかを書いておきます。

まず、退職の手続きは淡々と進みます。会社と代行サービスの間で、退職日や書類のやり取りが事務的に進行します。デスクの私物は、後日郵送などで返されるのが一般的で、本人が取りに来る必要はありません。貸与品(社用携帯やPC、社員証など)は郵送で返す形になります。要するに、あなたが出社しなくても、実務はすべて片付きます。

残った仕事はどうなるか。上司が割り振り直して、チームで吸収します。数日はバタつきますが、1〜2週間もすれば新しい体制が日常になります。冷たい言い方に聞こえるかもしれませんが、組織とはそういうものです。そしてこれは、辞めることを迷っている人にとっては朗報のはずです。「自分が抜けたら職場が回らない」は、責任感の強い人ほど信じ込んでいますが、実際には回ります。回らせるのは残った管理職の仕事であって、あなたの仕事ではありません。

そして、あなたの話題は、思っているより早く出なくなります。最初の数日は「驚いたね」という会話がありますが、それだけです。誰もあなたを追いかけませんし、追いかける手段もありません。それが、この仕組みの設計だからです。

管理職も、退職代行で辞めていました

もう一つ、伝えておきたい事実があります。私が課長をしていた時期、別拠点の課長が二人、退職代行で辞めています。部下ではありません。同じ管理職です。

「退職代行は若手が使うもの」というイメージがあるかもしれませんが、実際は違います。役職がついていても、部下を持っていても、言い出せないものは言い出せない。むしろ役職者ほど、「自分が辞めたら現場が」「引き継ぎが」と責任を背負い込んで、普通の退職ができなくなることがあります。立場に関係なく、人には限界があります。管理職二人の退職代行を横で見て、私はそう受け止めました。

考えてみれば、管理職は退職を相談する相手が一番いない立場です。部下には言えない。同僚の管理職はライバルでもある。上司に言えば引き止めと説得が始まる。数字の責任を背負ったまま、誰にも本音を話せない。私自身、責任者としてのプレッシャーで眠れない時期を経験しているので、あの二人が電話一本の向こう側に逃げ込みたくなった気持ちは、想像がつきます。役職があるから大丈夫、という話ではまったくないのです。

退職代行を「使われやすい職場」には、共通点があります

管理職の視点でもう一つ書いておくと、退職代行を使われる職場には、傾向があると感じています。辞める話を切り出したら詰められる職場。引き止めがしつこく、退職の意思を伝えても話が進まない職場。そもそも上司に相談を持ちかけられる空気がない職場。つまり、「普通に辞めさせてもらえない」と社員に思われている職場です。

裏を返せば、退職代行を使われるのは、使われる側にも原因の一端があるということです。私自身、使われた後にそう考えました。理由を聞けなかったからこそ、自分の側に言い出しにくい何かがなかったか、振り返るしかありませんでした。だから、いま使うことを迷っているあなたが「こんな辞め方をしたら申し訳ない」と感じているなら、少し視点を変えてほしいのです。普通に言い出せる職場なら、あなたはとっくに普通に言い出しています。それができない状況になっているのは、あなたのせいだけではありません。

これから使うか迷っている人へ

ここからは、いま退職代行を使うか迷っている人に向けて書きます。

まず、「上司にどう思われるか」は、心配しなくて大丈夫です。使われた側の実感として言えますが、あなたが去った後の職場は、あなたが想像するより淡々と進みます。上司は驚き、少しもどかしく思い、そして日常に戻ります。あなたの人生の決断と、残された側の一時的な戸惑いとでは、重さがまるで違います。戸惑いのほうは、時間が解決します。

ただ、順序の話はしておきます。もし、まだ自分の口で「辞めます」と言える余力があるなら、まずはそれが一番です。状況次第では有給や引き継ぎの調整も自分のペースでできますし、費用もかかりません。退職代行は、それができないほど追い詰められたときの手段です。上司に言い出すことを考えるだけで体調が悪くなる、引き止めが執拗で話が進まない、出社すること自体が限界。そういう状態なら、迷わず使っていい。自分の口で言えないことは、弱さではありません。そこまで追い込まれる環境だった、というだけの話です。

選ぶなら「労働組合運営」のところにしてください

一つだけ、使われた側かつ管理職としての実務的なアドバイスです。退職代行はどこでも同じではありません。運営元によって、法的にできることが違います。

弁護士資格のない民間業者が、会社と退職条件の「交渉」(有給消化や退職日の調整など)をすると、弁護士法違反=非弁行為にあたる可能性があります。一方、労働組合が運営する退職代行は、労働組合法に基づく団体交渉権があるため、会社との交渉を合法的に行えます。会社側もそれを分かっているので、労組からの連絡には正面から応じます。受けた側から見ても、ここの差は大きいです。

労働組合型の退職代行は、いくつかあります。ここでは、退職代行業務を合同労働組合「toNEXTユニオン」が実施する、男女それぞれ専門のサービスを挙げておきます。どちらも労働組合が業務を行うため、会社との交渉を合法的に行える形態です。

女性の方(女性専門の退職代行):

女性の退職代行 わたしNEXT

男性の方(男性専門の退職代行):

男の退職代行

繰り返しますが、まだ自分の口で言える余力があるなら、それが一番です。これは「言えないほど追い詰められたときの、最後の安全装置」として知っておいてください。

使われた側から、一つだけお願いがあるとすれば

最後に、使われた側からのささやかなお願いを書かせてください。もし余力があれば、辞めた理由を、何らかの形で残していってほしいのです。

直接話す必要はありません。退職代行の担当者に「これだけ会社に伝えてほしい」と託すことができますし、労働組合運営のサービスなら、そうした要望の伝達も含めて対応してくれます。一行でいい。「残業の多さが理由です」「人間関係です」。それだけで、残された側は次の改善に動けます。私が一番苦しかったのは、辞められたことではなく、理由が分からないまま、何を直せばいいのかも分からなかったことでした。もちろん、それすら残す余力がないほど追い詰められているなら、何も残さず去って構いません。これは義務ではなく、あくまでお願いです。

よくある質問

Q. 退職代行を使ったら、上司や同僚に恨まれませんか。
私の場合、恨む気持ちは湧きませんでした。残るのは「理由を聞きたかった」というもどかしさくらいです。仮に快く思わない人がいたとしても、あなたはもうその職場に行きません。二度と会わない人の感情のために、自分の限界を超えて居続ける必要はありません。

Q. 依頼したら、その日から出社しなくていいのですか。
私が受けたケースでは、連絡が来たその日から、本人は一度も出社しませんでした。一般的には、依頼後は有給の充当や欠勤の扱いで出社しないまま、退職日を迎える流れになります。「明日も出社しなければならない」という前提が、依頼した瞬間から消える。使う側にとっては、ここが一番大きいのだろうと、受けた側からも感じました。

Q. 引き継ぎをしないで辞めるのは、無責任ではないですか。
管理職の立場から言うと、一人が急に抜けても、職場は回ります。回す責任は残った管理職と会社にあり、あなたにはありません。引き継ぎ資料を置いていけるならそれに越したことはありませんが、それができない状態だから代行を使うわけで、そこに罪悪感を持ちすぎないでほしいです。組織はあなたが思うより頑丈です。

Q. 会社から損害賠償を請求されたり、退職を拒否されたりしませんか。
期間の定めのない雇用(いわゆる正社員)の場合、民法627条により、退職の申入れから2週間が経過すれば雇用契約は終了するとされています。退職そのものを会社が拒否することは、法律上できません。損害賠償についても、辞めたこと自体を理由とした請求が認められるのは極めて例外的とされています。それに、受けた側の実感として言えば、去った一人を追いかけて争う余力も動機も、現場にはありません。会社側の関心は「次をどう回すか」に、すぐ移ります。

Q. 有給が残っています。消化できますか。
ここが、労働組合運営型を選ぶ意味が出るところです。有給消化や退職日の調整は「交渉」にあたるため、民間業者では対応できませんが、労働組合運営の退職代行なら団体交渉権に基づいて会社と交渉できます。残っている有給があるなら、依頼時に必ず伝えてください。

Q. 退職代行を使うと、転職先にバレますか。
退職代行を使ったこと自体が次の会社に通知される仕組みはありません。退職理由を面接でどう話すかは別途準備が必要ですが、「退職の手続きを代行サービスに依頼した」ことをわざわざ話す必要はありません。

最後に

退職代行を使われた側の感想は、まとめるとこうなります。驚いた。理由を聞けなくてもどかしかった。でも、恨んでいない。そして、あの仕組みは辞める側を確実に守っていた。管理職ですら使う人がいるくらい、限界は誰にでも来ます。

いま限界の近くにいる人は、自分を守ることを最優先にしてください。自分の口で言えるならそれが一番。言えないほどなら、労働組合運営の退職代行という選択肢があります。そして辞めた後は、次の環境をきちんと選ぶこと。同じ消耗を繰り返さないことのほうが、辞め方より、ずっと大事です。

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