SaaSやインサイドセールスへの転職を調べていると、「3ヶ月で戦力になれる」といった説明をよく見かけると思います。
本当にそうなのか。入社してからの3ヶ月で、実際には何が起きるのか。 ここを、きれいごと抜きでお伝えします。
私は営業ひとすじ20年、約70名の営業組織を管理してきました。新しく入ってきた人が、最初の3ヶ月でどうつまずき、どこで分かれていくのか。何百、何千という人が入っては去っていくのを見送ってきた立場から、正直に書きます。
まず、教科書が言う「3ヶ月」
一般的な育成の目安は、こう説明されています(出典:セイヤクほか)。
- 1週目:マインドセットを作る
- 1ヶ月目:基礎スキルを習得し、実践練習に入る
- 3ヶ月目:自立して営業活動ができ、目標を達成する
きれいな階段です。ですが、現場はこんなに整っていません。ここから、実際に起きることを月ごとに書きます。
入社直後〜1ヶ月:最初の山は「こんなにきついのか」
新しく入った人が、いちばん最初につまずくのは、スキルでも知識でもありません。「やる前」と「入った後」のギャップです。
ほとんどの人が、最初にこう思います。「こんなにきついのか」と。想像していたきつさと、実際のきつさが、違うのです。これは、ほぼ全員が通る最初の山です。だから、あなただけが弱いわけではありません。ここで「自分には向いていない」と早合点しないでください。
加えて、この時期は覚えることが一気に押し寄せます。商材知識、ツールの使い方、トークの型。専門家も「情報の洪水」と表現するほどです(出典:SmartHR)。一度に全部は覚えられません。ここで焦らないことが大事です。
派遣で入る方への、実用的な注意
ひとつ、派遣で入る場合に限った話をします。同じ職場でも、派遣会社によって働く条件が違います。 時給も違えば、稼働時間も違うことがあります。
だから、派遣で入るなら、入る前に「時給」と「稼働時間」の条件を、しっかり確認してください。同じ仕事をしているのに条件が違った、というのは、あとから知ると効いてきます。ここは、入社直後のギャップを減らすために、先に潰しておける部分です。
1〜2ヶ月:「こんなはずじゃなかった」が来る時期。でも──
1ヶ月、2ヶ月と経つと、多くの人の口から「こんなはずじゃなかった」が出てきます。この時期に、早期離職が起きやすいのは事実です。オンボーディングがなくOJT頼みで、教育の質が担当者によってばらつくことが、離職の一因だとも指摘されています(出典:BizBoost)。
ですが、採る側として何百、何千という人を見てきて、はっきり感じることがあります。
ちゃんとPDCAを回せている人は、「こんなはずじゃなかった」とは言わないのです。
やってみて、うまくいかない。だから次はこう変えてみる。それでまた確かめる。この回転をしている人は、毎日が「実験」になります。うまくいかないことすら、次の材料になる。だから「こんなはずじゃなかった」という言葉が出てきません。
逆に、この言葉が出てくるのは、当事者意識を持てていない人、PDCAが回せていない人に多いです。言われたことをこなすだけになっていると、うまくいかない日々が、ただの「つらい日々」になってしまう。同じ現実なのに、受け取り方がまるで違うのです。
ひとつ、はっきり言っておきたいことがあります。これは、雇用形態とはまったく関係ありません。
何百、何千と見てきて断言できます。派遣で入った方でも、当事者意識が高く、ぐんぐん伸びていく人はいます。逆に、正社員なのに、当事者意識が低いままの人もいます。 これが現実です。「派遣だから」「正社員だから」で、伸びるかどうかは決まりません。決めるのは、いつも本人の姿勢のほうです。
だから、もしあなたが今、派遣という立場からのスタートだとしても、まったく引け目に感じる必要はありません。当事者意識を持って、目標を決めて、振り返れる人は、立場に関係なく評価されていきます。 私は、そういう人を何人も、次のステップへ送り出してきました。
3ヶ月目の分かれ道:続く人と、辞める人の違い
そして3ヶ月目。ここで、続く人と辞める人が、はっきり分かれます。
その違いも、結局は当事者意識です。ただ、もう少し具体的に言えます。分かれ目は「目標が、自分の中で明確になっているか」です。
目標が明確な人は、自分のゴールをどこに置くかが決まっています。ゴールが決まっているから、「今の自分は、そこに対してどこまで来たか」を振り返れる。振り返れるから、PDCAが回る。そして──ここが大事なのですが──自分の成長を、感じられるのです。
成長を感じられている人は、辞めません。きつくても、前に進んでいる実感があるからです。逆に、目標が曖昧なままの人は、振り返る基準がないので、成長しているかどうかも分からない。だから、きつさだけが残ってしまう。
いちばん伝えたいこと:小さな成長に、気づけるか
最後に、これだけは伝えたいです。
昨日の自分ができなかったことが、今日の自分にできるようになる。 それは、ものすごい成長です。
昨日つながらなかった相手に、今日はつながった。昨日は言葉に詰まった質問に、今日はすっと答えられた。断られ方が、少しだけ柔らかくなった。こういう小さな変化は、毎日起きています。
目標が明確で、ちゃんと振り返れている人は、この小さな成長に気づけます。気づけるから、続けられる。3ヶ月を越えられるかどうかは、才能でも運でもなく、この「小さな成長に気づく力」にかかっているのだと、私は思っています。
だから、もしこれから入るなら、入社前に、自分なりのゴールを一つ決めておいてください。「半年後にはこうなっていたい」でも構いません。それがあるだけで、きつい3ヶ月の見え方が、まったく変わります。
まとめ
入社後の3ヶ月は、教科書のようにきれいには進みません。最初の山は「こんなにきついのか」というギャップ。1〜2ヶ月目に「こんなはずじゃなかった」が来て、3ヶ月目で続く人と辞める人が分かれます。
その分かれ目は、才能ではなく当事者意識、そして目標の明確さです。ゴールが決まっていれば、振り返れる。振り返れれば、成長を感じられる。昨日できなかったことが今日できる。その小さな成長に気づける人が、3ヶ月を越えていきます。
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※出典を記載した部分は、その媒体の見解・一般的な傾向です。出典のない部分は、筆者が約70名の営業組織を管理してきた中での実感であり、統計ではありません。立ち上がりのスピードや育成環境は、企業・商材・個人によって大きく変わります。
この記事を書いた人
営業ひとすじ20年。電話営業・インサイドセールスの現場から始まり、約70名の営業組織のマネジメントを経験。採用面接にも数百人単位で関わってきました。「辞めて正解だった人」も「辞めなくてよかった人」も見てきた立場から、テレアポ・インサイドセールス・営業職の次のキャリアについて、きれいごとではない話を書いています。


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